ピックルボールでは、強いショットを打つだけではポイントを取り切れません。
相手の立ち位置や返球コースを読みながら、「どこに、誰に、どのタイミングで打つか」を考えることが大切です。
今回は、実戦ですぐ意識できる5つのポイントを具体例つきで紹介します。
近い相手を狙って反応時間を奪う
ポイントを決めたい場面では、空いているスペースだけでなく、「どの相手が一番反応しにくいか」を見ることが大切です。
基本的には、自分から距離が近い相手ほどボールが届くまでの時間が短くなるため、守備の準備が難しくなります。
例えば、自分がベースライン付近からサードショットをドライブで打つ場面を想像してみましょう。
サードショット(※サーブ側のチームが、リターン後に打つ3球目のショット)で強く攻めるとき、相手2人がネット前に並んでいる場合があります。
このとき、自分の正面にいる相手と、斜め前のクロス側にいる相手では、正面の相手のほうが距離は短くなります。
同じスピードでボールを打った場合、近い相手のほうがボール到達までの時間が短くなるため、パドルを準備する時間も少なくなります。
そのため、特に狙う理由がなければ、まずはストレート方向の相手を攻めるのがひとつの基本です。
ただし、「近い相手を狙えばいつでも正解」というわけではありません。
例えば、正面の相手が後ろへ下がっていて、クロス側の相手だけがNVL付近に残っているなら、今度はクロス側の選手のほうが自分に近くなります。
NVL(※ノンボレーゾーン。ネットから約2.13mの範囲にある、ボレーを打つ際に踏み込めないエリア)は、通称「キッチン」とも呼ばれます。
スマッシュでも考え方は同じです。
相手がロブ(※相手の頭上を越えるように高く打つショット)を上げ、自分が高い位置からスマッシュできる状況になったとします。
相手2人がネット前に残っているなら、自分に近い選手の足元や体の横を狙うと、相手は対応する時間がほとんどありません。
一方で、ロブを打った選手が「スマッシュが来る」と予測して後ろへ下がった場合は、前に残っているパートナーのほうが狙いやすくなります。
大切なのは、打つ直前に相手の位置をもう一度確認することです。
- 自分に最も近い相手は誰か
- どちらか一方が後ろへ下がっていないか
- パドルの位置が低い相手はいないか
- バランスを崩している選手はいないか
こうした情報を一瞬でチェックできるようになると、「なんとなく強打する」状態から卒業できます。
初心者のうちは、相手コートの空いている場所だけを見がちです。
そこから一歩進んで、「誰が一番準備できていないか」まで見るようになると、ポイントを決め切る確率がグッと上がります。
「もう1球返ってくる」と準備する
「今のスマッシュ、絶対決まった!」
そう思った次の瞬間、相手がなんとかパドルに当て、ボールがネットを越えて返ってくる。
ピックルボールでは、こんなシーンが意外とよくあります。
特にレベルが上がるほど、相手は守備が上手くなります。
体勢を崩していてもパドルを差し出して返したり、スマッシュをブロックしてボールの勢いを殺したりする選手が増えてきます。
そこで重要になるのが、「ポイントはまだ終わっていない」と考える習慣です。
例えば、高く浮いたボールをスマッシュしたとします。
打った瞬間に「決まった!」と思い、パドルを下げたり、動きを止めたりしてしまうと、相手がボールを返してきたときに間に合いません。
スマッシュを打ったあとは、すぐにパドルを体の前へ戻し、次のボールに備えます。
特に相手がスマッシュをブロックすると、ボールが弱くなってネット前へ短く落ちてくることがあります。
そこで一歩前へ詰められれば、次のボレーで仕留めるチャンスになります。
ボレー(※ボールをバウンドさせず、空中で直接打つショット)はネット前で多く使われるため、ポイントを決めるうえで欠かせない技術です。
例えば、こんな流れを意識してみてください。
- 高いボールをスマッシュする
- すぐにパドルを構え直す
- 相手の返球が浮いたらもう一度スマッシュする
- 短く返ってきたら前へ詰めてボレーする
- 相手が返せなくなるまで集中する
この「あと1球」の意識があるかどうかで、決定力はかなり変わります。
また、相手の返球方向をある程度予測することも有効です。
例えば、相手がバックハンド側で苦しい体勢からボールを受けているなら、自由にコースを変える余裕は少なくなります。
こちらから見てストレート方向へ返ってくる可能性が高いなら、そこを予測してポジションを取ることもできます。
もちろん、毎回予想通りに返ってくるとは限りません。
それでも、
- 強打したあとに止まらない
- パドルをすぐ戻す
- 相手がどの体勢で返しているかを見る
- 次に短いボールが来る可能性も考える
この4つを意識するだけで、かなり違ってきます。
ポイントが本当に終わるのは、相手がボールを返せなかった瞬間です。
「ナイスショットだったから終わり」ではなく、「ナイスショットだったからこそ、次の1球を取りにいく」。
この考え方が、安定してポイントを取れる選手への第一歩です。
ショットを相手に読ませない
ピックルボールでは、速さだけではなく「相手に読まれないこと」も大きな武器になります。
相手が次に来るショットを分かっていれば、多少速いボールでも準備できます。
逆に、それほど速くないボールでも、予想外の方向へ飛んでくれば反応は難しくなります。
例えば、ネット前でディンクラリーをしている場面を考えてみましょう。
ディンク(※ネット近くの相手コートへ、柔らかく落とすショット)を何本か続けると、相手も「また低いボールが来る」と考え始めます。
そこで、ディンクと同じような構えから急にロブを上げれば、相手の頭上を抜ける可能性があります。
逆に、ロブを警戒して相手が少し後ろへ下がったら、今度は短いディンクを使えば前後の揺さぶりになります。
ここで重要なのが、「同じ構えから複数のショットを打てること」です。
例えば、ディンクを打つときとロブを打つときで、バックスイングの大きさがまったく違えば、相手はすぐに気づきます。
「この構えならロブが来る」
と分かってしまえば、フェイントの効果は弱くなります。
できるだけ、
- グリップ
- パドルの位置
- 構え
- バックスイング
- インパクトのタイミング
を似せることがポイントです。
フリックも有効です。
フリック(※コンパクトな手首や前腕の動きで、短いスイングから素早くボールを加速させるショット)は、ネット前の速い展開で使われます。
ゆっくりしたディンクを打つように構えながら、突然相手の体や空いたコースへ速いボールを打つことで、相手の反応を遅らせることができます。
さらに、視線もショットを読まれる原因になります。
例えば、クロスコートへ打つ前に、その方向をずっと見てしまうと、相手は「次はクロスだな」と予測できます。
上級者は、パドルの角度だけでなく、体の向きや目線も見ています。
そのため、狙う場所を直接見続けるのではなく、周辺視野(※正面を見ながら視界の端で周囲を確認する見方)を使うことも大切です。
慣れてきたら、
「クロスを見る→ストレートへ打つ」
「ストレートを見る→クロスへ打つ」
といったフェイントも使えます。
ただし、初心者のうちから無理に目線フェイントを入れる必要はありません。
まずは「毎回違うフォームにならない」ことから始めれば十分です。
同じ構えからディンク、ロブ、フリックを打ち分けられるようになると、相手は判断が一瞬遅れます。
ピックルボールはコートがコンパクトなだけに、この一瞬の遅れがそのままポイントにつながることも珍しくありません。
1球ではなくコンビネーションで考える
ポイントを決め切るのが上手な選手は、必ずしも毎回スーパーショットを打っているわけではありません。
むしろ、「1球目で相手を崩し、2球目で仕留める」という組み立てが上手い選手ほど、安定してポイントを取っています。
例えば、ベースライン付近から強いドライブを打った場面を考えてみましょう。
相手がネット前にいる状態で速いボールを打つと、相手はボールの勢いを抑えることを優先するため、返球が少し浮くことがあります。
この浮いたボールこそ、次の攻撃チャンスです。
ところが、1球目のドライブだけに集中してその場に残っていると、せっかく浮いたボールを攻撃できません。
そこで、ドライブを打ったあとに前へ移動し、次のボレーを狙います。
つまり、
- 強いドライブで相手を崩す
- 相手の返球を浮かせる
- 前へ詰める
- 浮いたボールをボレーやスマッシュで仕留める
という流れです。
これが「ショットを組み合わせる」という考え方です。
ダブルスでは、さらに面白い連係があります。
代表的なのが「シェイク・アンド・ベイク」です。
シェイク・アンド・ベイク(※一方の選手が強いドライブを打ち、相手の返球が浮いたところをパートナーが前へ詰めてボレーで仕留める連係プレー)は、攻撃的なダブルスでよく使われるパターンです。
例えば、
後衛の選手がサードショットを強く打つ
↓
前にいるパートナーがネットへ詰める
↓
相手の返球が浮く
↓
パートナーがボレーで決める
という流れになります。
これなら、ドライブを打った本人が前へ移動するよりも早く、ネット前で攻撃できます。
また、フリックからのカウンターもコンビネーションのひとつです。
相手のバックハンド側へフリックを打つと、相手が両手バックハンドで強く返してくることがあります。
それを最初から予測していれば、相手のカウンターに対してさらにカウンターを打つ準備ができます。
カウンター(※相手の強打に対し、その勢いを利用しながら素早く打ち返すショット)は、ネット前の速いラリーでよく登場します。
ポイントは、
「このショットで決める!」
と毎回考えすぎないことです。
むしろ、
「このショットを打ったら、どんな返球が来そうか」
「その返球をどこで待てばいいか」
と考えるほうが、実戦ではポイントにつながりやすくなります。
ボクシングでいえば、いきなり大振りの一発を狙うのではなく、ジャブで相手を動かし、次のストレートを当てるようなイメージです。
ピックルボールでも「ワンツー」で考えると、プレーがかなりシンプルになります。
強打よりも相手の足元を狙う
チャンスボールが高く浮いてくると、「思い切り叩きたい!」という気持ちになります。
もちろん、高いボールを強く打つのは有効です。
ただし、本当に大切なのはスピードではなく、「相手が返しにくい場所へ打てているか」です。
例えば、全力でスマッシュしても、ボールが相手の胸の高さへ飛んだらどうでしょうか。
相手がパドルを胸の前に構えていれば、反射的に当てるだけでボールが返ってくることがあります。
特にネット前では、距離が近いため、相手もパドルを前に出して防御しています。
そこで狙いたいのが足元です。
相手の足元へ速いボールを沈めると、相手はパドルを下げながら低い位置で処理しなければなりません。
さらに、ボールをネットより上へ持ち上げる必要もあるため、かなり難しい返球になります。
例えば相手がNVLライン付近にいるなら、足元の少し手前にボールが落ちるような角度をつけるのが理想です。
ネットより高い位置でボールを捉えられたときは、
「前へ強く打つ」
のではなく、
「上から下へ落とす」
イメージを持つと分かりやすいでしょう。
また、相手のパドル位置を見ることも大切です。
相手が体の右側にパドルを構えているなら、その反対側の左足付近へ打つと、パドルを大きく動かす必要があります。
逆に、相手の体の中心へ打つ方法もあります。
ダブルスで2人の間にボールを打つと、「どちらが取るのか」が一瞬分からなくなることがあります。
ただし、ポイントを確実に決めたいチャンスボールなら、まずは足元を狙うほうがシンプルです。
具体的には、
- 相手のシューズ付近を狙う
- パドルがない側の足元を狙う
- ボールを上から下へ叩く
- スピードよりも角度を優先する
という4つを意識してみてください。
スマッシュ練習でも、単に速さを競うのではなく、コーンやマーカーを相手コートの足元付近に置いて狙う練習をすると効果的です。
「一番速いボールを打てる人」より、「一番返しにくい場所へ打てる人」のほうが、実戦ではポイントを取れます。
パワーに自信がない初心者でも、足元へのコントロールを覚えれば十分に決定力を高められるのが、ピックルボールの面白いところです。
まとめ
ピックルボールでポイントを決め切るためには、ただ強く打つのではなく、相手との距離、立ち位置、次の返球まで考えることが重要です。
近い相手を狙い、「もう1球返ってくる」と準備し、同じ構えから複数のショットを打てるようになると、攻撃の幅は大きく広がります。
さらに、1球目で相手を崩して2球目で仕留める発想や、強打を相手の足元へ沈めるコントロールが身につけば、ポイントを取り切る確率はさらにアップします。
まずは試合や練習の中で、「誰を狙うか」「次はどこに返ってくるか」の2つから意識してみると、プレーの見え方がかなり変わってくるはずです。


