ピックルボールで勝てるようになりたいなら、まずはリターンを磨くべき?
世界的な指導者トニー・ロイグは、難しいショットよりも基本技術の安定感が重要だと語ります。
ダブルスの連携を変える「Respect the X」や実戦で役立つ4つのショット、メンタルの鍛え方まで、初心者にもわかりやすく解説します。
トニー・ロイグとは?世界で信頼される指導者の実績
ピックルボールの世界で、基本技術の大切さを発信し続けているのが、アメリカの指導者トニー・ロイグ(Tony Roig)です。
オンライン指導の先駆者として約10年にわたり活動し、初心者からPPAツアーに出場するプロ選手まで、幅広いレベルのプレーヤーを指導してきました。
彼は、ピックルボール指導者として最高位の認定資格「マスター・ティーチング・プロフェッショナル」を保有しています。
これまでの活動実績もかなり充実しています。
- YouTubeで700本以上の指導動画を公開
- 数百回に及ぶ対面講習会やクリニックを開催
- メンタル面を扱うポッドキャストを300回以上配信
- ピックルボールの指導書を2冊執筆
- PPAツアーやMLPの試合解説も担当
特に注目したいのは、プロ選手のような難しいプレーを教えるだけでなく、一般プレーヤーが試合で使える技術を重視している点です。
ロイグは「自分の役割は知識を伝えること」と語り、プレーヤーが競技への理解を深めることに力を注いでいます。
単にショットの打ち方を教えるのではなく、「なぜそのショットが必要なのか」「どんな場面で使うべきなのか」まで説明する指導スタイルが、多くのプレーヤーから支持されています。
「Respect the X」を解説!ダブルスで中央のボールは誰が打つ?
ダブルスで意外と多いのが、コート中央に飛んできたボールをどちらが打つか迷ってしまう場面です。
2人とも打とうとしてラケットがぶつかりそうになったり、逆にお互いが譲ってボールを見送ってしまったりすることもあります。
そんな問題を解決するヒントとして、ロイグが2018年に紹介したのが「Respect the X(リスペクト・ザ・エックス)」です。
これは、相手がボールを打った位置と自分たちの位置関係から、中央のボールを誰が担当するか判断する考え方です。
基本的には、相手がクロス方向から打ったボールを、その対角線上にいるプレーヤーが担当するという原則を利用します。
例えば、相手コートの右側から中央へボールが飛んできた場合、その相手と対角線上に位置する自分たちの右側のプレーヤーが対応するのが一つの目安になります。
ただし、これは絶対的なルールではありません。
ボールの高さや速さ、パートナーの位置などによって、適切な判断は変わります。
※クロス:コートを斜めに横切る方向のことです。
※Respect the X:コート上の対角線をX字に見立て、中央のボールをどちらが担当するか判断するための考え方です。
練習では、パートナーと「中央に来たボールは誰が取るか」を確認しておくと効果的です。
さらに「自分が取る!」と声を出す習慣をつければ、衝突や判断ミスを減らしやすくなります。
リターンが最重要!勝率を左右する4つの基本ショット
ロイグの指導理論で特に興味深いのが、ピックルボールで重要なショットの優先順位です。
多くのプレーヤーは、サードショットドロップや強力なドライブを重視しがちですが、ロイグはそれ以上に基本的なショットが重要だと考えています。
第1位:リターン・オブ・サーブ
ロイグが最も重要だと考えるのは、相手のサーブを打ち返すリターンです。
リターンが浅くなると、相手は前進しやすくなり、次のショットで攻撃される可能性が高まります。
逆に、相手コートの奥深くへ安定して返球できれば、相手を後方にとどめながら、自分はキッチンラインへ移動する時間を確保できます。
例えば、リターンをベースライン付近まで深く返すことができれば、相手は後方から3打目を打つ必要があります。
※ベースライン:コートの一番奥にある境界線です。
練習では、まずネットミスやアウトを減らし、そのうえで深い位置を狙うことがポイントです。
第2位:フォースショット(4打目)
フォースショットは、サーブ、リターン、サードショットに続く4打目です。
一般的なダブルスでは、リターン側のチームが先にキッチンラインへ到達できるため、4打目を有利な位置から打てることがあります。
例えば、相手のサードショットが少し高く浮いた場合は、足元へ打ち込んで前進を防ぐチャンスです。
一方、低く沈むボールに対して無理に強打すると、ネットミスやアウトにつながります。
ボールの高さに応じて攻撃と守備を切り替えることが大切です。
ロイグは、この4打目を安定させることで、リターン側の優位性を維持しやすくなると説明しています。
第3位:サーブ
サーブはラリーを始める最初のショットです。
ロイグが重視するのは、スピードだけを追求したサーブではなく、安定して相手コートへ入るサーブです。
例えば、10本打って何本もミスする強力なサーブより、安定して深い位置へ入れられるサーブの方が、試合を組み立てやすくなります。
練習では、相手コートの奥を狙いながら、無理のないフォームで繰り返し打つことがポイントです。
また、サーブを打った後は、相手のリターンに備えて適切な位置で構える必要があります。
サーブそのものだけでなく、次のショットへの準備まで意識することが重要です。
第4位:サードショット(3打目)
サードショットは、サーブ側のチームが打つ3打目のショットです。
相手がキッチンラインへ前進していることが多いため、そのまま強打するとボレーで返される場合があります。
そこで使われるのが、ネット際へ柔らかく落とすドロップや、低く速いボールを打つドライブです。
ドロップは相手に強打させにくくし、自分たちが前進する時間をつくるためのショットです。
一方、ドライブは相手の足元や体の近くを狙い、返球を難しくする目的で使われます。
※ボレー:ボールが地面にバウンドする前に打つショットです。
ロイグはサードショットの重要性を認めつつも、まずはリターンや4打目、サーブを安定させる方が、多くのプレーヤーにとって効果的だと考えています。
初心者・中級者が上達するための実践的な練習方法
ロイグが特に重視しているのは、レベル3.0〜4.0程度の一般プレーヤーです。
※3.0〜4.0:ピックルボールの実力を示すレーティングの目安です。
3.0は基本技術を習得している段階、4.0はショットの安定性や戦術理解が高まっている段階とされています。
ロイグは、3.0〜3.5のプレーヤーがリターンとフォースショットを身につければ、同じレベルの相手に対して大きな優位性を持てると語っています。
では、普段の練習では何を意識すればよいのでしょうか。
おすすめは、次の3つの練習です。
- 深いリターンを繰り返す練習:相手コートの後方を狙い、10球中何球入るかを確認します。
- フォースショットの打ち分け練習:高く浮いたボールは攻撃し、低いボールは無理せず返します。
- ダブルスのポジショニング練習:パートナーと声をかけ合いながら、中央のボールへの対応を確認します。
さらに、キッチンライン付近では細かく足を動かし、次のボールに素早く反応できる姿勢を保つことも大切です。
難しいショットを増やすことより、基本的なプレーの成功率を上げることが、安定した試合運びにつながります。
メンタルも勝敗を左右する!「Pickleball Therapy」の考え方
ピックルボールでは、技術だけでなくメンタルもプレーに大きく影響します。
例えば、簡単なボールをミスした後に焦ってしまい、次のポイントでも無理なショットを選んでしまうことがあります。
また、ダブルスではパートナーのミスに反応しすぎると、チーム全体の雰囲気が悪くなることもあります。
ロイグは、こうした精神面の課題に注目し、「Pickleball Therapy」というポッドキャストを始めました。
自身もシニアプロとしてプレーする中で、プレッシャーへの対処やパートナーとの関係を改善するため、人間の心理について研究してきました。
試合で意識したいポイントは次のとおりです。
- ミスを引きずらず、次のポイントに集中する
- 結果だけでなく、良い判断ができたかを振り返る
- パートナーを責めず、前向きな声かけを意識する
- 勝敗だけにとらわれず、プレーそのものを楽しむ
「Pickleball Therapy」は2020年から配信され、300回以上のエピソードが制作されています。
技術練習と同じように、気持ちの切り替え方を身につけることも、安定したパフォーマンスにつながるという考え方です。
YouTubeや書籍で世界に広がるトニー・ロイグの指導哲学
ロイグの指導活動は、コート上のレッスンだけではありません。
彼はYouTubeやブログ、書籍などを活用し、世界中のプレーヤーが自分のペースで学べる環境をつくっています。
YouTubeでは、基本ショットの打ち方からダブルスの戦術まで幅広く解説しています。
特にプロ選手の試合を分析し、一般プレーヤーにも応用できる技術を紹介する動画は、試合の見方を変えるヒントになります。
また、新たな学習プログラム「Tony Roig Pickleball」では、段階的に技術を習得できる「Pickleball Builder」を展開しています。
このプログラムでは、サーブやリターンといった基礎から、サードショットの選択、ディンクの戦術、メンタル面まで体系的に学べます。
※ディンク:キッチン付近から相手のキッチンへ柔らかく落とすショットです。相手に攻撃させないための重要な技術です。
ロイグは、個人レッスンで一人を指導するよりも、質の高いコンテンツを制作することで何千人ものプレーヤーを支援できると考えています。
「Respect the X」の動画が多くの人に広まったことは、その考え方を象徴する出来事といえるでしょう。
まとめ
トニー・ロイグの指導哲学で最も注目したいのは、難しいショットよりも基本技術の完成度を高めるという考え方です。
特にリターン、フォースショット、サーブを安定させることは、初心者から中級者が試合で結果を出すための大切なポイントになります。
さらに「Respect the X」によるダブルスの連携や、メンタル面の改善も、プレーの質を高めるヒントになるでしょう。
次の練習では、派手なショットに挑戦する前に、まず基本技術がどれだけ安定しているかをチェックしてみてください。


