誰にでも起こり得る現象ですが、正しく向き合えば必ず克服できます。
この記事では、原因から対処法まで、楽しくプレーを取り戻すためのヒントを紹介します。
イップスとは?
イップスとは「本来なら簡単にできる動作が、頭で考えすぎて突然できなくなる」現象のことです。
特にピックルボールのサーブは、静止状態から自分のタイミングで打てる分、余計に不安が入り込みやすいショットです。
体の連動(※キネティックチェーン)が一瞬で崩れ、ボールがネットやアウトに吸い込まれてしまう。
ゴルフでのパターや、野球での送球と同じように、技術よりも心理的要因が大きく絡むのが特徴です。
アマチュアに多い現象
イップスはプロにも起こりますが、特に多いのはアマチュア層です。
例えば大会の初戦、観客が見ている中で「絶対に入れなきゃ」と思うと、途端にサーブが入らなくなるケースがあります。
私が教えたプレーヤーの中には、フォアハンドサーブでイップスを発症し、泣く泣くバックハンドサーブに切り替えた人もいました。
数週間〜数か月も続くことがあり、練習では入るのに試合でだけ崩れる、という典型的な症状もよく見られます。
楽しさよりも「怖さ」が勝ってしまうのです。
イップスの原因
イップスの背景には「恐怖」があります。
恥をかくのが怖い、仲間を失望させたくない、自分はもうサーブを入れられないかもしれない…。
そんな思いが頭を支配すると、体が固まり、スムーズな連動が失われます。
腰が止まり、肩が開き、肘や手首がちぐはぐに動いてしまうのです。
さらに医学的には「局所性ジストニア」と呼ばれる神経的な問題が絡むケースもあり、単なる精神的プレッシャーだけが原因ではないとされています。
つまり、体と心の両方にアプローチする必要があるのです。
体験談:サーブが消えた2週間
私自身もイップスを経験しました。
フロリダのインドアコートで、ウォーミングアップをせずにゲームに参加したときのことです。
オレンジ色のインドアボールを初めて打った瞬間、サーブが相手プレーヤーの体に直撃。
「わざとだ」と疑われ、場の空気は最悪に。
頭が真っ白になり、その日からサーブが崩壊しました。
謝っても自信は戻らず、2週間もサーブがまともに打てなかったのです。
たった一度の出来事が、長く続く負の連鎖につながるのがイップスの怖さです。
克服法① バックアップサーブ
イップスを乗り越えるための第一歩は「保険のサーブ」を持つことです。
具体的にはスライスサーブやスクリューボールサーブ。
前足に体重を乗せ、手首を固定して打つので、動作が少なく安定しやすいのが特徴です。
これを武器にすると「とりあえず入る」という安心感を得られます。
ただし注意が必要です。
楽だからといって常にバックアップに逃げてしまうと、メインサーブを取り戻す機会を失います。
イップスを克服するためには、最終的に「本来のサーブ」と向き合う覚悟が欠かせません。
克服法② ルーティンと信頼感
次に大切なのが「サーブ前のルーティン」です。
毎回同じ手順を踏むことで、余計な思考を減らし、心を落ち着けることができます。
例えば「ボールを2回弾ませる → 狙いを確認する → パドルをボールに軽くタッチする」という流れを必ず繰り返すのです。
さらに「目を閉じてサーブ」を試す練習も効果的。
視覚を遮断することで感覚に集中でき、自然なスイングを体に刻めます。
呼吸を意識し、プレーを楽しむ気持ちを取り戻すことで、徐々に「サーブは必ず入る」という信頼感が育っていきます。
まとめ
イップスは技術の問題ではなく「心」と「体」の不協和音から生まれます。
- バックアップサーブを持ち、安心感を得る
- サーブ前のルーティンで心を落ち着ける
- 練習で「目を閉じても打てる」感覚を育てる
こうした積み重ねが、自信を取り戻す一番の近道です。
恐怖に縛られず「自分を信じて打つ」ことができたとき、あなたのサーブは再び輝きを取り戻します。