ピックルボールは、力まかせに打つより「どこに置くか」「どう崩すか」を考えたほうが圧倒的に勝ちやすくなるスポーツです。
この記事では、トップコーチの考え方をベースに、日本人プレーヤー向けに具体的な攻撃戦略をまとめました。
明日のゲームでそのまま試せる内容なので、気になったポイントから取り入れてみてください。
トップスピン・ディンクが攻めの起点
最初に覚えたいのが「トップスピン・ディンク※」です。
※ネット近く(キッチンライン※付近)から、前方向の回転をかけて小さく低く打つショット
※キッチンライン:ネットから約2m前後のノーバウンド禁止エリアの線
このショットの目的は、「相手を下がらせる」または「姿勢を崩させる」ことです。
具体的には、
・相手足元ギリギリを、山なりではなく少し直線気味に転がす
・ネットすれすれを通して、相手に上向きで拾わせる
このイメージで打つと、次のボールが甘くなりやすいです。
練習では、
1. 足を止めた状態で、相手の足元マーカーを狙って10本連続で入れる
2. クロス→ストレート→ミドルとコースを変えながら打ってみる
こんなドリルをすると、「置きに行く攻撃」の感覚がつかめます。
オフェンスは「ポジション勝ち」を狙う
攻めているかどうかは、ボールの速さではなく「自分の体勢」で決まります。
チェックしたいポイントは3つです。
・両足が肩幅くらいに開いていて、つま先がコート内側を向いているか
・前傾しすぎず、軽くひざを曲げてどの方向にも動けるか
・打ったあと、次の一歩をすぐ出せる準備ができているか
たとえば、苦しい体勢から無理に強打して、次のボールに届かないのは“攻め”ではなく“自滅”です。
逆に、あえてスピードを落としてディンクでつなぎ、1〜2歩中に入ってからトップスピン・ディンクを打つのは、立派な攻撃的プレーです。
自分の中で、
「これは準備の1球」「これは攻めの1球」
とラベルをつけながらプレーすると、判断ミスが減ってミスショットも激減します。
相手ペアの弱点ターゲットを見つける
ダブルスでは、「どっちに多く打つか」で難易度がガラッと変わります。
まず意識したいのがこの3つの観察です。
1. フォアよりバックハンド※が明らかに弱い人はどっちか
※バックハンド:利き手と反対側で打つショット
2. 前に詰めるのが遅い人はどっちか
3. ミドル(2人の内側の足の間)のボールをよく見逃すのはどっちか
ラリー序盤は、あえて
・ミドルに2〜3本続けて入れる
・片方のバック側へ集中的にロールする
など、ちょっと“テスト”するイメージで配球していきます。
そこから、
「この人はバックが弱いから、最後はそっちで決め切ろう」
「この人はミドルを取りにくるのが遅いから、隙が出たときに真ん中に落とそう」
と、ペア内で簡単に役割分担できると、一気にゲームメイクがしやすくなります。
苦しいときはとりあえずミドルに逃がす
大きく振られたときや、後ろに下げられたときにやりがちなのが、
・クロスのライン際を狙ってアウト
・ストレートの鋭角を狙ってネット
という「見た目はカッコいいけどリスク高すぎ」なショットです。
ここでやるべきなのは、
・2人の内側の足の間を、ロブでもドロップでもなく“普通のスピード”で返す
ことだけです。
ミドルに打つと:
・どちらが取るか一瞬迷わせられる
・コースが狭くなるので、角度をつけにくい
・自分は中央に戻りやすい
というメリットがあります。
具体的なイメージは、
「とりあえずコートの真ん中に“リセットボタン”を置く」感じです。
この1球が打てるかどうかで、苦しいラリーから何度も生還できるようになります。
決め球は「チキンウィング」と肘を狙え
決め球チャンスが来たとき、「空いてるところにとりあえず強く」は、意外と返されがちです。
そこで狙いたいのが、相手の「動きにくい場所」です。
具体的なターゲットは:
1. 利き手側のわき〜肩の横あたり(チキンウィング※)
※手を中途半端に曲げた“手羽先”みたいな形になり、振り抜きにくい位置
2. 非利き手側の肘の外側あたり
ここを狙うと、
・ストロークにもボレーにもなりきらない
・窮屈なフォームになってミスしやすい
という状況を作れます。
練習では、
・相手の胸の横あたりに、ミニオンターゲットやコーンを置いて狙う
・ストレートとクロスで、どちらが狙いやすいか試す
といった“的当てゲーム”感覚でやると、試合でも自然と狙えるようになります。
攻撃プランAとBを持つことが超大事
強い人ほど、「この1球で決める」ではなく「この流れで崩す」を考えています。
シンプルでいいので、プランAとBをセットで用意しましょう。
例1:
A:相手バック側ディンクを続けて、浮いたらチキンウィングを狙う
B:バック側を読まれたら、次の1球だけミドルに変えて相手を迷わせる
例2:
A:右サイドからクロスにトップスピン・ディンクを連発
B:相手が前に詰めてきたら、1本だけ足元ロブで下げる
プレー前に「もしこの球が返ってきたら、次はここ」と、せめて1手先だけでもイメージしておくと、焦って変なミスをすることが一気に減ります。
試合のたびに、自分なりのA・Bパターンを1セットずつ増やしていく感覚でOKです。
まとめ
ピックルボールで「攻める」というのは、実は強打よりも、
・トップスピン・ディンクで相手をじわじわ崩す
・ポジションとミドルでラリーをコントロールする
・チキンウィングや肘など“嫌な場所”をピンポイントで突く
この3つの組み合わせで成り立っています。
今日紹介した戦略は、どれも少し意識を変えるだけで、すぐにコートで試せるものばかりです。
次のゲームでは、1つでいいので「これだけはやる」と決めて入ってみてください。
気づいたら、ただ打ち合うだけの試合から、“考えて支配する”試合に変わっているはずです。




