緊張と高揚が入り混じるコートで、マックス・フリーマンがピックルボール界の絶対王者ベン・ジョンズを撃破!
外しても攻め続ける勇気、そして終盤で見せた集中力が勝利を引き寄せました。
その舞台裏と一球ごとの駆け引きを、本人の視点から振り返ります。
キャリア最大の勝利、その背景
今回の勝利は、男子シングルスの上位5シードが全員早期敗退という波乱の中で訪れました。
会場は異様な空気に包まれ、観客席でも「今日は何かが起きるかも」というざわめきが広がっていました。
フリーマンは「今の男子シングルスは、まるでバスケの『マーチ・マッドネス』(※番狂わせ続出の大会)みたい」と語ります。
混戦の中で迎えた試合は、彼のキャリアを変える舞台となりました。
第1ゲーム:攻めのリターンで先取
試合開始直後から、フリーマンはミス覚悟の攻めを選択。
リターン(※サーブを受けた直後の返球)で深く強く打ち込み、相手に簡単な3球目(サードショット)を打たせない作戦でした。
ネット際の駆け引きではまだベンに分があるため、あえてラリーを避ける方針です。
序盤は興奮で力み、6-6でタイムアウトを取る場面も。「もう第1ゲームは落としたかも」と一瞬よぎったその時、フォアハンドが冴えわたり、相手の守備を切り裂く鋭いショットが連発。
観客のどよめきとともに、一気にゲームを取り切りました。
第2ゲーム:修正の遅れと苦戦
第2ゲームでは流れが逆転。ベンが深く速いサーブで攻めてきたことで、フリーマンは後手に回ります。
数回リターン位置を下げましたが、それではベンの攻撃力を抑えきれず、ドライブ(※スピード重視の打球)の速度を落としたのも裏目に出ました。
結果、相手にネット近くで短いボレー(※ネット際でのコンパクトな打球)を許し、主導権を奪われます。
それでも、「ここで崩れたら終わり」と気持ちを切らさず、次のチャンスを辛抱強く待ち続けました。
経験が生んだ終盤の落ち着き
フリーマンが終盤で冷静さを保てたのは、これまでの修羅場経験があったからです。
ジャック・ソックに2勝、ガーネットに1勝、大観衆の前で大一番を制したMLP(※メジャーリーグ・ピックルボール)での戦い。
何百人に見られながらサードショットをミスした経験も、今ではメンタルの糧になっていました。
「ミスは気にしない。決まる球があれば、それでいい」。
その割り切りが、プレッシャーの中でも強気のショットを打たせました。
勝負を決めた数ポイント
9-5でリードされた状況から、フリーマンは深いリターンとフォアの強打でじわじわと追い上げ。
相手が焦りを見せた瞬間、スコアは9-9。ここでベンがタイムアウトを要求。
普通なら緊張で固くなる場面ですが、彼の頭を支配していたのは「好奇心」でした。
「この2〜5ポイントで決まる。でも、何が起こるかは誰にも分からない」。
余計な戦術は捨て、得意なショットを思い切り打つ。
その選択が功を奏し、歓声の中で勝利をつかみ取りました。
忘れられない一日
試合後、あまりの感情の高ぶりに「インタビューより先に車に乗って叫びたい」と思ったほど。
その後、次のラウンドでグレイソン・ゴールディンに敗れたものの、この日は生涯忘れられない一日となりました。
攻め続け、挑み続けた姿は、観客の記憶にも深く刻まれたはずです。
まとめ
この勝利は、単なる番狂わせではなく、経験と勇気が融合した結果でした。
今のピックルボール界では、最後まで攻め続ける胆力こそが勝敗を分ける時代になりつつあります。
そしてマックス・フリーマンは、この日、その象徴となったのです。