メジャーリーグ・ピックルボールのプレーオフ初戦で、第5シードのコロンバス・スライダーズが、第2シードのダラス・フラッシュを撃破する大波乱が起きました。
相手選びの判断ミスを突き、戦術の切り替えと緻密なゲームプランで準決勝進出を決めた一戦を詳しく振り返ります。
コロンバスが仕掛けた大波乱
注目を集めたのは、ダラスが自ら準々決勝の相手を選ぶ権利を持ちながら、あえてコロンバスを選んだこと。
多くの解説者は「テキサスを選んだ方がリスクは少ない」と予想していただけに、この判断は波紋を呼びました。
結果はフルマッチの末にコロンバスが勝利。
つまりダラスは、自ら選んだ相手に敗れるという最悪のシナリオをたどったのです。
戦術以前に「相手選び」という最初の決断が勝敗を大きく分けました。
第1ゲームは速攻ドライブで主導権奪取
第1ゲームでは、コロンバスのダエスク&クリンガーが「ドライブ&クラッシュ(※力強いドライブで相手を崩し、すかさず前に詰めて仕留める攻撃)」を連発。
特にダエスクのパワフルなドライブはネット際で低く伸び、ジョンソンとジーにほとんど時間を与えませんでした。
本来、ダブルスでは4人全員がキッチンライン(※ネット際のゾーン)に揃ってからのディンク(※小さな打ち合い)が定石ですが、このゲームではその展開がほとんどなし。
コロンバスが早い段階で仕掛け、ポイントを短時間で奪う試合運びで主導権を完全に握りました。
第2ゲームはジーのバックハンド徹底狙い
続く第2ゲームでは流れが変わります。ダラス側がドライブの対応に慣れ、ラリーが長くなる展開に。
ここでコロンバスが次に選んだのは「ジーのバックハンド狙い」でした。
長いディンクラリーの中で、意図的にジーへボールを集め続ける。
1ゲーム目ではジーに5本以上連続で打たせたラリーはわずか1回でしたが、第2ゲームでは7回も発生。
これは明確に戦術の変化を示しています。
ジーは安定感ある選手として有名ですが、コロンバスはあえて「攻めさせる」形に誘導。
ジーが強打に転じた瞬間には、ダエスクとクリンガーがすかさず反撃し、逆に得点を重ねました。
第3ゲームでジョンソンの無理攻めを攻略
第3ゲームではジョンソンが積極的に中央に入り込みました。
これは「ジーにボールを集められるパターンを断ち切る」狙いでしたが、結果的に自分のポジションを崩してしまう展開に。
ジョンソンは普段、ミックスダブルスでは妹のジョルジャと組んでおり、その際は自分の担当エリアをしっかり守るスタイルが多い選手。
広範囲をカバーする戦い方は得意ではなく、無理に前へ出ると逆にコロンバスに隙を突かれてしまいました。
結果、第3ゲームもコロンバスが押し切り、シリーズをものにしました。
ダラス男子ペアの今季低迷
ジョンソン&ジーは昨季、MLP優勝の立役者となった強力ペアですが、今季は明らかに低迷。
- 2025年成績:16勝16敗(勝率50%)、終盤14試合でわずか5勝、プレーオフは0勝3敗
- 2024年成績:25勝10敗(勝率71%)、プレーオフでは7勝1敗
特に今季は相手チームが「ジーのバックハンド狙い」を徹底。
ジーが攻撃を作れず、ジョンソンが無理にカバーしてバランスを崩す、というパターンで敗れる試合が増えました。
昨季の王者にとって、今シーズンは「研究され尽くした苦しい1年」になったといえます。
戦術がもたらした明暗
コロンバスは「速攻のドライブ」「ディンクでの揺さぶり」「相手の無理攻めを逆手に取る」といった複数の戦術を、ゲームごとに切り替える柔軟さを見せました。
一方のダラスは「相手の研究に対応しきれなかった」印象が強く、試合の中で有効な修正ができませんでした。
ピックルボールは戦術の幅が狭まると一気に不利になるスポーツ。
今回の一戦は、まさにその典型例といえるでしょう。
まとめ
コロンバスの勝利は偶然ではなく、明確な戦術と冷静な判断の積み重ねでした。
- 第1ゲームは速攻で主導権を奪取
- 第2ゲームでは相手の弱点を徹底マーク
- 第3ゲームは無理攻めを冷静に攻略
対するダラスは研究され尽くし、打開策を見出せずに敗戦。
プレーオフという舞台で、戦術の柔軟性と試合中の修正力がどれほど重要かを証明した一戦でした。