ピックルボール大手JOOLAが2026年4月に起こした特許侵害訴訟が大きく動きました。
争点は「Propulsion Core」と呼ばれるパドル内部の技術。
対象11社のうち8社と解決したと発表される一方、まだ法的手続きが続く企業もあり、パドル開発競争の行方が注目されています。
JOOLAが起こした特許侵害訴訟とは?
今回のニュースは、ピックルボールパドル大手のJOOLAが2026年4月に起こした特許侵害訴訟の続報です。
JOOLAは、11社が同社の保有するとする「Propulsion Core」技術を許可なく使用したと主張し、米国国際貿易委員会と連邦裁判所で法的手続きを進めてきました。
※米国国際貿易委員会(ITC)=アメリカへの輸入品などをめぐる知的財産権問題を扱う米国の機関です。
今回JOOLAが発表したのは、その11社のうち8社との間で解決に至ったというものです。
つまり、訴訟を起こした段階から比べると、対象企業の大半について何らかの決着がついたことになります。
ただし「8社すべてがJOOLAの主張を全面的に認めた」という意味ではありません。
原文では「settled or consented」とされており、企業によって和解や判決への同意など対応方法が異なります。
ここはニュースを見るうえで大切なポイントです。
特許訴訟では、裁判所が最後まで審理して勝敗を決めるケースもあれば、途中で当事者同士が条件を決めて解決するケースもあります。
※特許侵害=特許で保護された技術を、権利者の許可なく製造・使用・販売などに利用することです。
争点はパドル内部の「Propulsion Core」
今回の訴訟の中心になっているのが、JOOLAの「Propulsion Core」です。
JOOLAによると、この技術は同社が長期間をかけて開発・テストした独自技術で、2024年以降の複数のパドルに採用されてきました。
原文では、具体的に次のシリーズが挙げられています。
- JOOLA 3S
- JOOLA Pro IV
- JOOLA Pro V
ピックルボールパドルというと、表面素材や厚み、重さなどに目が行きやすいですが、内部構造も性能を左右する重要な部分です。
パドルの内側には「コア」と呼ばれる構造があり、ボールを打ったときの反発感、打球感、コントロールのしやすさなどに関係します。
そのためメーカー各社は、単純にデザインを変えるだけではなく、内部構造にも独自技術を投入しています。
今回JOOLAが問題にしているのは、まさにその部分です。
JOOLAは、自社が時間とコストをかけて開発したPropulsion Coreを、ほかのメーカーが許可なく使ったと主張しています。
※コア=パドルの表面材の内側にある中心構造。
素材や形状などによって、打球感や反発特性に影響します。
※Propulsion Core=JOOLAが自社の知的財産として保有していると主張する、パドル内部構造に関する技術です。
JOOLAは11社中8社と解決したと発表
JOOLAは今回、訴訟対象となった11ブランドのうち8ブランドとの間で解決に至ったと発表しました。
原文で具体的に名前が挙げられているのは、次の企業・ブランドです。
- Paddletek
- ProXR
- Facolos
- Proton
- Volair
- All Racquet Sports / All For Padel
- Engage
All Racquet Sports / All For Padelについては、Adidasブランドのピックルボールパドルを扱うライセンシーとして記載されています。
※ライセンシー=ブランドや技術などについて、権利者から許可を受けて使用・製造・販売する事業者のことです。
Engageについては、通常の和解ではなく「consented to judgment」、つまり判決への同意という形で処理されたとされています。
一方で少し気になるのが数字です。
JOOLAの発表では「11社中8社と解決」とされていますが、原文で名前が具体的に列挙されている企業は7社です。
そのため、8社目がどの企業なのかは、今回提供された原文だけでは確認できません。
JOOLAのCEOであるRichard Leeは、8件の解決について、自社の知的財産が実際に存在し、保護されるものであることを示す結果だという考えを示しています。
ただし、和解条件の詳細や各社が具体的にどこまでJOOLAの主張を認めたのかについては、原文では明らかにされていません。
Diademにはデフォルト判決を求める
Diademについては、ほかの企業とは違う展開になっています。
原文によると、Diademは今回の訴訟に対して回答を行っていないとされ、JOOLAは裁判所に「default judgment」を求めています。
※デフォルト判決=訴えられた側が期限までに必要な対応を行わなかった場合などに、裁判所が原告側の申し立てをもとに判断する仕組みです。
ここで注意したいのは、JOOLAがデフォルト判決を「求めている」段階だということです。
今回の原文だけでは、すでに裁判所がJOOLAの申し立てを認め、最終的な判決を出したとは書かれていません。
つまり現状は、
- JOOLAがDiademを訴えた
- Diademが訴訟に回答していないとされている
- JOOLAがデフォルト判決を裁判所へ求めている
という段階です。
和解した企業とは状況がかなり異なります。
今後は裁判所がJOOLAの申し立てをどのように判断するかがポイントになります。
また、デフォルト判決になった場合でも、具体的にどのような内容の判断や救済が認められるかについては、今回の原文だけでは確認できません。
Franklin Sportsなど3社とは争いが継続
今回の発表時点で、JOOLAとの和解や判決への同意に至っていない企業として挙げられているのが次の3社です。
- Franklin Sports
- RPM Pickleball
- Friday Labs
つまり「11社中8社と解決」という大きな進展はあったものの、訴訟そのものが完全に終了したわけではありません。
この3社については、今後も裁判手続きや当事者間の交渉が続く可能性があります。
今後注目したいのは、JOOLAのPropulsion Coreに関する特許がどこまでの範囲をカバーすると判断されるのかです。
特許訴訟では、「似た構造だから侵害」という単純な話だけではなく、特許の請求範囲に相手企業の製品が実際に含まれるのかが重要になります。
※特許の請求範囲=その特許によって「どこまでの技術を独占的に保護するのか」を示す部分です。
ただし今回の原文では、Franklin Sports、RPM Pickleball、Friday Labsがどのような反論をしているのか、またそれぞれの製品のどの部分が問題になっているのかまでは説明されていません。
そのため、この3社について現時点で「侵害が確定した」と判断することはできません。
今後の訴訟の進展次第では、JOOLAの特許権の範囲や、他社がどのようなパドル構造を採用できるのかがより具体的に見えてくる可能性があります。
特許問題がピックルボールパドル業界に与える影響
今回のニュースが面白いのは、単なるメーカー同士の法廷バトルではなく、急成長するピックルボール用品市場そのものに関わる話だからです。
パドル市場では現在、各ブランドが反発性能、コントロール性能、スピン性能、打球感などを競っています。
外から見ると似たようなパドルでも、内部には各社独自の素材や構造が使われています。
そこで重要になるのが「どこまでが独自技術で、どこからが他社も使える一般的な構造なのか」という線引きです。
もし特定の内部構造が広い範囲で特許保護されれば、ほかのメーカーは似た構造を避けて、新しい設計を開発する必要が出てくる可能性があります。
一方、特許の範囲が限定的と判断されれば、各社が似た方向性の技術開発を続けられる可能性もあります。
つまり、裁判の結果は法務部門だけの話ではありません。
- 新しいパドルの内部構造
- メーカーごとの開発方向
- 新製品の発売計画
- ライセンス契約
- ブランド間の技術競争
などにも影響する可能性があります。
※ライセンス契約=特許などの権利を持つ側が、一定の条件や対価のもとで他社にその技術の使用を認める契約です。
プレーヤー目線では、「打ちやすい」「飛ぶ」「コントロールしやすい」といった性能が一番気になるところですが、その性能を生み出す技術の裏側では、かなりシビアな開発競争が行われています。
ピックルボール市場が大きくなるほど、今後は性能だけでなく「誰がその技術を開発したのか」「誰が使う権利を持っているのか」という知的財産の重要性もさらに高まりそうです。
まとめ
JOOLAが2026年4月に起こした特許侵害訴訟は、対象11社のうち8社と解決したと発表され、大きく前進しました。
一方、Diademについてはデフォルト判決を求める手続きが進み、Franklin Sports、RPM Pickleball、Friday Labsとの争いも残っています。
今回の訴訟は、一つのメーカーの権利問題だけではなく、ピックルボールパドルの内部構造や新製品開発をめぐる競争が次の段階へ入ったことを示す出来事ともいえます。
今後の裁判や合意内容によっては、各ブランドの設計や技術開発にも影響する可能性があり、パドル市場の動きを見るうえでも注目しておきたいニュースです。


