PPA混合ダブルスに新時代?ベン・ジョンズ&アナ・リー・ウォーターズを追う3組の現在地

コラム

PPA混合ダブルスを長く支配してきたベン・ジョンズ/アナ・リー・ウォーターズ組に、いよいよ強力なライバルがそろってきました。

通算302試合で295勝7敗、勝率97.3%という圧倒的な2人ですが、2026-27シーズンは「誰がこの王者を止めるのか」が大きな見どころになりそうです。

勝率97.3%でも絶対ではないジョンズ/ウォーターズ

ベン・ジョンズ/アナ・リー・ウォーターズ組は、これまで302試合を戦って295勝7敗。勝率は97.3%です。

数字だけ見ると、「ほぼ負けない」と言っていいレベルです。

しかし、ノースカロライナで行われたPPA Tour Veolia Pickleball National Championshipsでは、第1シードながら準決勝で第3シードのJW・ジョンソン/ジョージャ・ジョンソン組に敗れました。

試合結果は、

  • 第1ゲーム:11-4でジョンズ/ウォーターズ
  • 第2ゲーム:9-11でジョンソン兄妹
  • 第3ゲーム:6-11でジョンソン兄妹

となり、ジョンソン兄妹が逆転勝利しました。

特に重要だったのが第2ゲームです。

ジョンズ/ウォーターズ組にも勝ち切れるチャンスがありましたが、そこで試合を終わらせることができませんでした。

元記事では、2人が普段ほど鋭いプレーを見せられていなかったと分析しています。

特にウォーターズのディンクは、いつものような精度や攻撃性が少し不足していたとされ、中継の解説者もその点に触れていました。

※ディンク=ネット付近から相手のキッチン内へ柔らかく落とすショット。相手に強打させず、次の攻撃チャンスを作るために使います。

ただ、この試合で逆に王者の強さも見えました。

調子が完璧ではないジョンズ/ウォーターズ組を倒すために、トップ4クラスのジョンソン兄妹でも最終ゲームまで戦う必要があったからです。

しかも大きな大会の決勝では、3ゲーム先取のベスト・オブ・5方式になることがあります。

※ベスト・オブ・5=最大5ゲームを戦い、先に3ゲームを取ったチームが勝つ試合方式です。

試合が長くなるほど、一時的な勢いだけでは勝ちにくくなります。

高いレベルを長時間維持できるジョンズ/ウォーターズ組にとっては、むしろ有利に働く可能性があります。

だからこそ、1大会で準決勝敗退したからといって王者交代とは言えません。

それでも以前より確実に、「倒せるチーム」が増えてきています。

最大の対抗馬はパトリキン/ブライト

ジョンズ/ウォーターズ組のトップの座を最も脅かす候補として注目されているのが、ヘイデン・パトリキン/アナ・ブライト組です。

ノースカロライナ大会では第2シードで出場し、決勝でジョンズ/ウォーターズ組を破ったジョンソン兄妹と対戦しました。

決勝のスコアは、

  • 第1ゲーム:11-9
  • 第2ゲーム:11-3
  • 第3ゲーム:11-7

で、パトリキン/ブライト組がストレート勝ちしています。

第1ゲームはかなり接戦でした。

序盤はジョンソン兄妹が積極的に攻撃し、パトリキン/ブライト組はやや動きが重く見えました。

それでも接戦を11-9で取り切ると、第2ゲームでは11-3。第3ゲームも11-7で勝利し、その後は相手に大きく流れを渡しませんでした。

このペアの強みは、2人の役割がかなり分かりやすいことです。

パトリキンはキッチンライン付近で広く動き、パートナー側へ来たボールにも積極的に入り込めます。

※キッチンライン=ネットから約2.13mの位置にあるノンボレーゾーンの境界線。
ダブルスでは、このライン付近を取れるかどうかが大きなポイントになります。

パトリキンが中央までカバーすると、相手は「どこへ打ってもパトリキンが触ってくる」というプレッシャーを受けます。

一方のブライトは、クロスコートのディンクで非常に高い安定感を持っています。

※クロスコート=自分の位置から斜め方向にある相手コートへ打つコースです。

ブライトが相手と丁寧にディンクを続けながらミスを引き出し、甘いボールが出たところでパトリキンが攻撃する。

この形ができると、かなり崩しにくいペアになります。

元記事では、2026-27シーズンにジョンズ/ウォーターズ組へ最も近づく可能性があるチームとして、この2人を評価しています。

ポイントになるのはパトリキンの安定感です。

ブライトはすでにツアーでも安定した選手ですが、パトリキンは大会によってパフォーマンスに差が出る場面もありました。

そこが改善されれば、「調子がいい週だけ強いチーム」ではなく、「毎大会優勝候補になるチーム」へ変わる可能性があります。

ジョンソン兄妹は王者を倒せる実力派

JW・ジョンソン/ジョージャ・ジョンソン組は、約3年間にわたって混合ダブルスのトップ争いに入っている兄妹ペアです。

最大の強みは、「ジョンズ/ウォーターズ組に勝った経験が一度だけではない」ことです。

すでに複数回王者を破っており、MLPでも同じチームで結果を残しています。

ノースカロライナ大会の準決勝でも、トップシードを相手に第1ゲームを4-11で落としながら、第2ゲームを11-9、第3ゲームを11-6で取り返しました。

このペアが勝つためのポイントは、大きく2つあります。

まずJW・ジョンソンです。

JWは、ツアーでもトップクラスのハンドスピードを持っています。

※ハンドスピード=ネット近くの高速ラリーで、瞬間的にパドルを動かしてボールへ反応する能力です。

ピックルボールの上級者同士では、ネット前で突然強打の応酬になる「ハンドバトル」が起こります。

JWはこの展開に非常に強く、相手が先に攻撃してきてもすぐに打ち返せます。

ただし、能力が高いだけでは十分ではありません。

ジョンソン兄妹が強豪を倒すには、JWが遠慮せず広い範囲へ入り、積極的に攻撃する必要があります。

ノースカロライナでジョンズ/ウォーターズ組を破った試合では、それがうまくできていました。

もう一つのカギがジョージャです。

ジョージャは、相手の位置や空いているコースを見る「コートビジョン」に優れています。

※コートビジョン=相手、パートナー、空いているスペースを瞬時に把握し、どこへ打つか判断する能力です。

ジョージャ自身も男子選手との高速ラリーに対応できるため、相手が女性側を集中的に狙う戦術を取っても簡単には崩れません。

さらに、自分から攻撃を作り、ボールをJW側へ集める展開にできれば、兄の強力な攻撃力を生かせます。

反対に、右サイド同士で長いディンク戦になってしまうと、ウォーターズやブライトのような安定感の高い選手がいるペアに有利な展開になります。

つまりジョンソン兄妹は、「守って勝つ」というより、自分たちから試合を動かせるかどうかが大きなポイントです。

アルション/ロアバッハーは怖いダークホース

クリスチャン・アルション/レイチェル・ロアバッハー組は、トップ3ほど絶対的な評価ではないものの、かなり怖い存在です。

元記事では、この2人を2026-27シーズンの「ダークホース」としています。

※ダークホース=優勝候補の最上位ではないものの、上位勢を倒して優勝する可能性を持つチームや選手です。

前提になるのは、2人とも健康な状態でプレーできることです。

コンディションが整えば、どのトップペアにも勝てる力があります。

特にアルションの特徴は、コートを非常に広く使うことです。

通常の混合ダブルスでは、男女それぞれがある程度担当エリアを分けます。

しかしアルションは、自分のサイドだけではなく中央やパートナー側へ入り込み、積極的にボールを処理します。

この動きがハマると、相手から見るとかなり厄介です。

本来なら女性側へ打っているつもりでも、突然アルションが入り込んで強打してくるからです。

ただし、そこにはリスクもあります。

アルションが動きすぎると、本来いた場所が空きます。トップ選手はそこを見逃しません。

相手に逆方向へ切り返されたとき、空いたスペースへ打ち込まれる危険があります。

そのためロアバッハーとの連携が重要です。

「どこまでアルションが取るのか」「どこからロアバッハーに任せるのか」という判断が安定すれば、このペアは一気に上位争いへ入る可能性があります。

トップ3と比べると結果の安定感ではまだ差がありますが、「1試合だけなら誰でも倒せる」という怖さを持つチームです。

97.3%という勝率はどれほど異次元なのか

ジョンズ/ウォーターズ組の295勝7敗、勝率97.3%。

数字だけを見るとすごいのは分かりますが、実際どれほど異常なのでしょうか。

元記事では、PPA Tourの統計担当Jim Ramseyの考え方を使って説明しています。

たとえば、あるペアが大会で5試合すべて勝って優勝したとします。

成績は5勝0敗です。

翌週の大会では決勝まで進みましたが、最後に1敗して準優勝だったとします。

この大会では4勝1敗です。

2大会の合計は、

  • 9勝
  • 1敗
  • 勝率90%

となります。

毎週「優勝→準優勝→優勝→準優勝」という信じられないほど安定した成績を続けても、勝率は約90%です。

それでもジョンズ/ウォーターズ組の97.3%には大きく届きません。

97.3%を維持するには、100試合なら約97試合に勝たなければならない計算です。

さらに難しいのは、同じトップ選手同士で戦い続けるツアーでこの数字を残している点です。

ほかの強豪ペアは大会途中でジョンズ/ウォーターズ組と当たり、その試合で敗戦が加わります。

つまり王者自身が、ライバルたちの勝率を下げる存在にもなっています。

その状況で295勝7敗という数字を残しているからこそ、2人は歴史的なペアと評価されています。

今後の注目は、この勝率がどこまで下がるかです。

元記事では、2026-27シーズンは100%に近い数字ではなく、85%程度になっても驚かないと予想しています。

ただ、85%でも100試合なら85勝15敗です。

普通に考えれば、それでも十分すぎるほど強い数字です。

2026-27シーズンは準決勝から激戦になりそう

以前のジョンズ/ウォーターズ組には、「決勝で最大のライバルを倒せば優勝」という大会もありました。

しかし2026-27シーズンは、その流れが変わる可能性があります。

たとえば、

  1. 準決勝でジョンソン兄妹
  2. 決勝でパトリキン/ブライト組

という組み合わせになることも考えられます。

つまり金メダルを取るには、トップ4クラスのペアを2試合連続で倒さなければならないケースが増えます。

そこへアルション/ロアバッハー組が割って入れば、大会によっては準々決勝あたりから危険なカードが生まれる可能性もあります。

王者にとって難しいのは、チームごとに戦い方が違うことです。

  • パトリキン/ブライト:パトリキンの広いカバー範囲+ブライトの安定したディンク
  • ジョンソン兄妹:JWの高速ハンド+ジョージャの展開力
  • アルション/ロアバッハー:アルションの広い守備・攻撃範囲+2人の爆発力

というように、それぞれ違った対策が必要になります。

同じ攻略法だけでは勝ち続けられません。

これが2026-27シーズンの混合ダブルスを面白くするポイントです。

「ジョンズ/ウォーターズが弱くなった」のではなく、対抗できるチームの数が増えました。

これまでは王者1強という印象がかなり強かった混合ダブルスですが、今後は「トップ4の組み合わせ次第で結果が変わる」という展開が増えそうです。

まとめ

ベン・ジョンズ/アナ・リー・ウォーターズ組は、302試合295勝7敗、勝率97.3%という圧倒的な実績を持ち、2026-27シーズンも最大の優勝候補です。

ただしパトリキン/ブライト組、ジョンソン兄妹、アルション/ロアバッハー組など、それぞれ違った武器を持つ強豪ペアがそろい始めました。

これからは「ジョンズ/ウォーターズが勝つか」だけではなく、準決勝からどの相手と当たり、相手の特徴にどう対応するかまで見ると混合ダブルスがさらに面白くなります。

王者の支配が続くのか、それとも新しいトップペアが生まれるのか。

2026-27シーズンは、PPA混合ダブルスの勢力図が大きく動くシーズンになりそうです。

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