PPAツアーやメジャーリーグ・ピックルボールで使われる新ルールブックが発表されました。
判定へのチャレンジ、選手のマナー、反則の基準、さらにはボールへ息を吹きかける行為まで、プロ競技としてのピックルボールが一段階レベルアップしていきます。
UPA-Aが新ルールブックを公開
アメリカのプロピックルボール界で、大きなルール変更が発表されました。
PPAツアーやメジャーリーグ・ピックルボールを管轄するUPA-Aが、新しいルールブックを公開したのです。
これまでプロの試合でも、基本的にはUSA Pickleballのルールをベースに運用されてきました。
しかし、プロの試合ではビデオ判定や審判とのやり取り、観客の前での振る舞いなど、一般プレーとは違う場面が多くあります。
そこでUPA-Aは、プロの大会により合った独自のルールブックを作りました。
今回公開されたルールブックは全71ページ。
2026年5月22日から適用され、PPAツアーやメジャーリーグ・ピックルボールの試合で使われます。
特に注目したいのは、ルールの細かさです。
「ライン判定をどう扱うか」「選手が抗議しすぎた場合はどうするか」「試合を遅らせたらどうなるか」など、試合中に起こりやすいトラブルへの対応がかなり具体的に書かれています。
つまり今回のルールブックは、単なるルール変更ではありません。
ピックルボールをプロスポーツとして、より公平で見やすい競技にするための土台づくりと言えます。
チャレンジ失敗にはペナルティも
新ルールでは、プロの試合で判定に異議を申し立てる「チャレンジ」の扱いがより明確になりました。
各チームには、1ゲームごとに2回のラインレビューと、1回の無料ビデオチャレンジが与えられます。
ラインレビューとは、ボールがラインの内側に落ちたのか、外側に落ちたのかを確認するための制度です。
たとえば、サイドラインぎりぎりに落ちたボールを相手が「アウト」と言った場合に、本当にアウトだったのかを確認できます。
一方で、無料ビデオチャレンジはもう少し広い判定に使えます。
たとえば、フットフォルト(※サーブ時やキッチン付近で、足の位置がルール違反になること)や、選手の体やパドルにボールが触れたかどうかなどです。
これまでは、判定に納得できないときに選手が強く抗議する場面もありました。
しかし新ルールでは、チャレンジに失敗したときのペナルティがはっきり決められています。
主なポイントは以下の通りです。
- 無料チャレンジが残っている状態で失敗した場合は、その無料チャレンジを失う
- 無料チャレンジが残っておらず、まだ制裁を受けていない場合は、マークが科される
- すでにマークやファウルを受けている状態でチャレンジに失敗すると、相手に1点が入る可能性がある
マークとは、警告より重い正式な制裁のことです。
これからのプロ選手は、「怪しいからとりあえずチャレンジ」ではなく、「本当に判定が覆る可能性があるか」を冷静に判断する必要があります。
チャレンジの使い方そのものが、試合の勝敗を左右する戦術になっていきそうです。
選手のマナー違反がより明確に
今回の新ルールブックでは、選手の振る舞いに関する基準もかなり具体的になりました。
特に重要なのが「マーク」と呼ばれる制裁です。
マークはブルーカードとも呼ばれ、単なる注意より重いペナルティになります。
たとえば、審判に対して何度もしつこく抗議する行為はマークの対象になります。
「今の判定は違うだろ」と一度確認する程度ならまだしも、試合の流れを止めるほど文句を言い続けると、制裁を受ける可能性があります。
また、相手選手や観客に対して不快な態度を取ること、繰り返し暴言を吐くこと、ラリー間にボールを強く打ちつけること、パドルで物を叩くことなども対象です。
感情が高ぶる場面はプロの試合ではよくありますが、見ている人が不快になるような行動は認められません。
マークの対象になりやすい行為には、次のようなものがあります。
- 審判、相手選手、観客にしつこく抗議する
- 暴言や不快な言動を繰り返す
- パドルで物を叩く
- ラリー間にボールを強く打つ、または投げる
- プレーを必要以上に遅らせる
- 主審の合図後、15秒以内に準備できていない
- 許可されていないコーチングを受ける
- 試合中に許可なく電子機器を使う
試合進行に関する違反も明確になりました。
たとえば、タイムアウトがないのに用具トラブルを理由に試合を止めたり、認められた時間を別の目的に使ったりする行為も問題になります。
ピックルボールは、テンポの速さと選手同士の近さが魅力のスポーツです。
そのぶん、ちょっとした態度や発言が試合の空気を大きく変えます。
今回のルール化によって、「熱いプレー」と「やりすぎな行動」の境界線がよりはっきりしました。
マークとファウルで試合の流れが変わる
マークよりもさらに重い制裁が「ファウル」です。
ファウルはオレンジカードとも呼ばれ、科された瞬間に相手チームへ1点が与えられます。
これは、試合の流れを一気に変えるかなり重いペナルティです。
マークは、試合を乱す行為やスポーツマンシップに反する行為に対して科されるものです。
一方でファウルは、より悪質な行為に対して科されます。
たとえば、相手や審判を脅すような態度、危険な行動、物を壊すような行為、すでに注意やマークを受けた後に同じ違反を繰り返す行為などです。
マークとファウルの違いを簡単に整理すると、以下のようになります。
- マーク:警告より重い制裁。試合中に累積される
- ファウル:より重い制裁。科された時点で相手に1点が入る
- すでにマークを受けた後に再びマークやファウルを受けると、相手に1点が入る
- 最初の制裁がファウルだった場合も、相手に1点が入る
たとえば、試合序盤に審判へのしつこい抗議でマークを受けたとします。
その後、終盤の大事な場面でまたプレーを遅らせるような行為をすると、次は相手に1点が入る可能性があります。
接戦での1点はとても大きく、場合によっては勝敗を決めることもあります。
つまり、これからのプロピックルボールでは、技術だけでなくメンタルコントロールもかなり重要になります。
強いショットを打てるだけではなく、判定に納得できない場面でも冷静でいられるか。
そこまで含めて、トップ選手の実力が問われる時代になっていきます。
ボールに息を吹きかける行為は禁止へ
今回の新ルールで特に話題になっているのが、ボールに息を吹きかける行為の禁止です。
これは少し変わったルールに聞こえるかもしれませんが、プロの試合ではかなり重要なポイントです。
たとえば、ネット際にふわっと落ちたボールが、ネットを越えるか越えないかギリギリの場面を想像してください。
そこで選手がボールに息を吹きかけたり、手やパドルで風を送ったりして、相手コートに落とそうとする行為が問題になります。
これまでは、USA Pickleballのルールではこの行為が明確に禁止されていませんでした。
しかしUPA-Aの新ルールでは、合法的なパドルでの打球以外の方法で、ボールの飛び方を変えようとする行為は禁止されます。
禁止される行為の例は以下の通りです。
- ボールに息を吹きかける
- 手であおいで風を送る
- パドルで風を送る
- 服や体の動きで空気の流れを作る
- 物を使ってボールの進路に影響を与える
違反した場合はフォルトになります。
フォルトとは、そのラリーを失う反則のことです。
このルールが注目された背景には、サクラメントの大会で起きた判定があります。
エリック・オンシンズ選手が、ネット際のボールに息を吹きかけたとして、スポーツマンシップに反する行為の警告を受けました。
当時は明確な禁止ルールがなかったため、議論が起きたのです。
一見すると「そんな細かいことまで?」と思うかもしれません。
でも、プロの試合では数センチ、数秒の差が勝敗を分けます。
パドルで打つ以外の方法でボールに影響を与えることを禁止するのは、公平な勝負を守るためには自然な流れと言えます。
プロ競技化が進むピックルボールの未来
今回のUPA-A新ルールブックは、ピックルボールが本格的なプロ競技へ進んでいることを強く感じさせる内容です。
判定へのチャレンジ、選手のマナー、反則の種類、試合進行、審判との関係まで、かなり細かく整理されています。
これまでのピックルボールは、誰でも気軽に楽しめるスポーツというイメージが強くありました。
その魅力はもちろん今後も変わりません。
ただ、プロの世界では観客、スポンサー、配信、リーグ運営などが関わるため、試合の信頼性がとても重要になります。
たとえば、選手が毎回のように判定へ強く抗議して試合が止まると、観客はテンポの悪さを感じます。
反対に、ルールが明確で、審判も選手も同じ基準で動けるようになれば、試合はより見やすくなります。
また、選手にとってもメリットがあります。
どの行為がマークになり、どの行為がファウルになるのかが明確になれば、余計な混乱を減らせます。
試合中に「これはセーフなのか、アウトなのか」と迷う場面が減り、プレーに集中しやすくなるはずです。
今後、PPAツアーやメジャーリーグ・ピックルボールを見るときは、強烈なスマッシュや華麗なラリーだけでなく、チャレンジの使い方や選手の振る舞いにも注目です。
ルールを知って観ると、試合の駆け引きがグッと面白くなります。
まとめ
UPA-Aの新ルールブックは、プロピックルボールをより公平でわかりやすい競技にするための大きな一歩です。
チャレンジ失敗時のペナルティや、マーク、ファウルの基準が明確になったことで、選手には技術だけでなく冷静な判断力も求められます。
ボールに息を吹きかける行為の禁止は、少しユニークに見えますが、競技の公平性を守る象徴的な変更です。
これからのピックルボールは、ショットの迫力だけでなく、ルールをめぐる駆け引きや選手のメンタル面まで楽しめるスポーツになっていきそうです。





