60歳以上のピックルボールダブルスは、走力やパワーだけで勝つ競技ではありません。
立ち位置、配球、ペアとの声かけを整えれば、若い相手にもスマートに対抗できます。
経験を武器に、無理なく勝ちやすい戦い方を紹介します。
キッチンラインを支配する
60歳以上のダブルスでまず大事なのは、できるだけ早くキッチンラインまで上がることです。
キッチンラインとは、ネット近くにあるノンボレーゾーン(※ノーバウンドで打てないエリア)の境界線のことです。
ここを2人で取れると、相手の強打を止めやすくなり、逆に浮いた球を攻撃しやすくなります。
たとえば、自分がリターンを深く返したら、すぐに前へ出ます。
パートナーは最初からキッチンライン付近で待ち、2人で横並びに近い形を作ります。
これだけで相手は足元や中央を狙いにくくなります。
注意したいのは、ベースラインとキッチンラインの間で止まることです。
この中間エリアはトランジションゾーン(※攻めにも守りにも中途半端になりやすい場所)と呼ばれ、相手に足元を狙われやすい危険ゾーンです。
意識したいポイントは次の通りです。
・リターンを打ったら止まらず前へ出る
・2人の距離を空けすぎない
・片方だけ前、片方だけ後ろの状態を長く作らない
・相手が打つ前に自分の立ち位置を整える
キッチンラインを支配するとは、ただ前に出ることではありません。
無理に突っ込むのではなく、深いリターンややわらかいショットで前へ出る時間を作ることが大切です。
走力で勝つというより、相手より先に有利な場所を取るイメージです。
ソフトゲームで相手を崩す
シニア世代のダブルスでは、強打よりもソフトゲームが大きな武器になります。
ソフトゲームとは、ディンク(※ネット近くに低く落とすショット)、リセット(※速い打ち合いを落ち着かせる返球)、ドロップショット(※相手のキッチン内にふわっと落とすショット)など、力よりコントロールを使うプレーです。
若い相手はスピードのあるボールで押してくることがあります。
そこでこちらも力で打ち返そうとすると、タイミングがズレてネットミスやアウトが増えます。
逆に、低くやわらかく返し続けると、相手は強く打ちにくくなり、だんだん焦って浮かせてくれます。
たとえば、相手が強いドライブを打ってきたら、無理に打ち返さず、面を合わせてキッチン内へポトッと落とします。
これがリセットです。強いボールを強く返すのではなく、相手の勢いを消すのがコツです。
特に大事なショットは次の3つです。
1.ディンクで相手に低い球を打たせる
2.リセットで速い展開を止める
3.サードショットドロップで前へ出る時間を作る
サードショットドロップとは、サーブ側が3球目に打つやわらかいショットです。
相手のキッチンに落とすことで、サーブ側も前へ上がりやすくなります。
ソフトゲームは地味に見えますが、実はかなり攻撃的です。
相手に「強く打てない」「攻めるタイミングがない」と感じさせることで、ミスを引き出せます。
経験豊富なプレーヤーほど、こうした我慢比べで強さを発揮できます。
ペアとの声かけを決めておく
ダブルスで失点しやすいのは、技術不足だけが原因ではありません。
「どっちが取るの?」と一瞬迷ったボールが、そのまま失点につながることがよくあります。
特に中央のボール、ロブ、サイドチェンジの場面は、事前に決めておかないとバタバタしやすいです。
たとえば、2人の間に来たボールは、基本的にフォアハンド側の人が取ると決めておくと迷いが減ります。
ただし、ペアの得意不得意によっては「中央は〇〇さん優先」と決めてもOKです。
大事なのは、試合中にその場で考えないことです。
ロブ(※相手の頭上を越える高いショット)を打たれたときも同じです。
2人で同時に下がると前が空きますし、どちらも下がらないと抜かれます。
「深いロブは後衛側が追う」「右側に上がったら右の人が下がる」など、簡単なルールを作っておきましょう。
使いやすい声かけは次の通りです。
・「自分」
・「お願い」
・「任せた」
・「スイッチ」
・「下がる」
・「前出て」
声かけは長い言葉にしないのがコツです。
ラリー中は一瞬で判断するので、短く、はっきり、同じ言葉を使い続けることが大切です。
うまいペアは、スーパーショットを連発しているわけではありません。
お互いの守備範囲を分かっていて、無駄な動きが少ないのです。
シニアダブルスでは、体力を温存するためにも、声かけのルール作りがかなり重要になります。
動きを減らす立ち位置を作る
60歳以上のダブルスでは、「たくさん走れるか」より「走らなくても届く場所に立てるか」が大切です。
立ち位置が良ければ、1歩か2歩で対応できます。
逆に立ち位置が悪いと、毎回大きく横へ動かされ、体力も集中力も削られてしまいます。
まず意識したいのは、2人の間を空けすぎないことです。
相手は中央を狙ってきます。
特にバックハンド側が苦手な選手がいる場合、相手はそこをしつこく狙います。
最初から中央を少し締めておくと、相手の狙いを消しやすくなります。
また、2人が完全に横一列になるより、少し前後差をつけた方が守りやすい場面もあります。
片方が少し前、もう片方が少し後ろにいると、短いボールにも深いボールにも対応しやすくなります。
立ち位置で意識したいポイントは次の通りです。
・2人の間はパドル1〜2本分を目安にする
・相手が打つ前に足を止めて構える
・横に追いかけず、斜め前に入る
・苦手なバックハンド側を狙われる前にカバーする
・ペアが外に動いたら中央を少し締める
たとえば、パートナーがサイドへ振られたら、自分は少し中央へ寄ります。
これで真ん中の大きな穴を消せます。
反対に、2人ともボールに寄りすぎると逆サイドが空くので注意が必要です。
ポジショニングは派手ではありませんが、勝敗に直結します。
良い場所に立つだけで、体への負担が減り、相手に「打つ場所がない」と思わせることができます。
サーブリターンで主導権を取る
サーブリターンは、ダブルスの流れを決める重要なショットです。
リターンが浅いと、相手は前に出やすくなり、3球目で強く攻めてきます。
反対に、深く返せれば相手を後ろに残せるので、自分たちが先にキッチンラインを取れます。
シニアプレーヤーにおすすめなのは、深くクロス方向へ返すリターンです。
クロスに打つとコートを広く使えるため、ミスが減りやすくなります。
さらに、相手を後ろへ下げることで、こちらが前へ出る時間も作れます。
ここで大事なのは、リターンでポイントを決めようとしないことです。
強く打ちすぎてアウトするより、深く安定して返す方がダブルスでは効果的です。
リターンの目的は、相手を崩すことより、自分たちが有利な位置を取ることです。
リターンの基本ステップは次の通りです。
1.相手のサーブを落ち着いて見る
2.ベースライン近くを狙って深く返す
3.できればクロス方向へ打つ
4.打ったらすぐキッチンラインへ進む
5.前へ出ながら次のボールに備える
たまには相手の足元を狙うリターンも有効です。
特に相手がサーブ後に前へ出てくるタイプなら、足元へ沈めることで弱い3球目を引き出せます。
ただし、毎回難しいコースを狙う必要はありません。
まずは「深く返して前へ出る」を徹底しましょう。
これだけで、試合の安定感はかなり変わります。
打つべき球と我慢する球を見極める
シニアダブルスで勝つためには、攻める勇気と我慢する冷静さの両方が必要です。
すべての球を強打しようとするとミスが増えますし、逆にチャンスボールまでつないでしまうと、相手に立て直す時間を与えてしまいます。
判断の基準はシンプルです。
ネットより高い球は攻撃、ネットより低い球はリセットです。
たとえば、相手のディンクが浮いてネットより高くなったら、足元を狙ってボレーで攻めます。
顔や体を狙うのではなく、足元へ打つと相手は返しにくくなります。
一方で、ネットより低い球を無理に持ち上げて強打すると、ネットミスになったり、相手のチャンスボールになったりします。
この場合は、やわらかくキッチンへ返して、もう一度ラリーを作り直すのが正解です。
判断の目安はこちらです。
・ネットより高い球は攻撃する
・ネットより低い球は無理に打たない
・体勢が崩れているときはリセットする
・相手が前に詰めすぎたらロブを使う
・迷ったら強打よりコントロールを優先する
ロブもシニアダブルスではかなり使える武器です。
相手がキッチンラインにベタ詰めしているとき、頭上を越すロブを入れると、相手を後ろへ下げられます。
これにより、相手の前への圧力を弱められます。
大切なのは、力いっぱい打つことではなく、状況に合ったショットを選ぶことです。
攻める球と我慢する球を見極められると、無駄なミスが減り、試合全体を落ち着いて進められます。
まとめ
60歳以上のピックルボールダブルスは、体力だけで勝負する必要はありません。
キッチンラインを取り、ソフトゲームで相手を崩し、ペアと声をかけ合うことで、若い相手にも十分戦えます。
特に大切なのは、無理に走らず、先に良い場所へ立つことです。
深いリターン、丁寧なディンク、落ち着いたリセットを使えば、試合の主導権を握りやすくなります。
ピックルボールは、経験や判断力がしっかり武器になるスポーツです。
これからは「頑張って動く」だけではなく、「賢く動いて勝つ」ダブルスを楽しんでいきましょう。


