18歳のプロ選手トリスタン・デュソーが、APPデトロイト大会でシングルス、混合ダブルス、男子ダブルスに挑戦しました。
シングルスでは逆転勝利から準々決勝へ進み、男子ダブルスでもベスト8。
試合中の戦術変更やパートナーとの声かけ、一人で遠征する若手プロの日常まで追います。
イングランドからデトロイトへ続いた18歳の連戦
トリスタン・デュソーは、デトロイト大会の直前までイングランドでプレーしていました。
本人にとって、ピックルボール選手としてアメリカ国外の大会へ出場したのはこれが初めてです。
イングランドではシングルスで準々決勝まで進み、男子ダブルスではローナン・キャムロンと急きょペアを組みながら銀メダルを獲得。
混合ダブルスでは、イギリスのイーヴィー・ケナと組んで4位に入りました。
海外の選手、普段とは違うコート、現地の観客が作る独特の雰囲気。
トリスタンにとっては、結果以上に「アメリカの外で戦う感覚」を経験できたことが大きかったようです。
その大会を終えると、今度はそのままデトロイトへ移動。
到着した日にも仲間と会場へ行き、シングルスの実戦練習を行っています。
普通なら長距離移動のあとには少し休みたくなるところですが、大会はすぐ目の前です。
18歳ながら、
- 航空便での移動
- 宿泊先での生活
- 練習時間の確保
- 食事や睡眠
- 試合に向けたコンディション調整
まで自分で考えながら遠征を続けています。
トリスタン自身も、一人で各地へ移動することで「自分の行動すべてに責任を持てるようになる」と語っています。
コートでの技術だけでなく、自分自身を管理する力もプロ選手には必要です。
18歳のトリスタンにとって、この連戦そのものが大きな成長の場になっています。
シングルスは5-10から大逆転、準々決勝では友人ダスティと激突
デトロイト大会のシングルスでは、最初の試合が相手の棄権による不戦勝となり、リチャード・リヴォルネーゼ戦が実質的な初戦になりました。
第1ゲームは11-9。トリスタン自身は「最高のプレーではなかった」と振り返っていますが、接戦をしっかり取り切りました。
見どころは第2ゲームです。
リチャードがサーブを強くし、ネット周辺を広くカバーするスタイルへ変更。
トリスタンは5-10まで追い込まれました。
あと1ポイント取られればゲームを落とす状況です。
そこからトリスタンは10-10まで追いつき、最終的には13-11で逆転勝利。
調子が完璧でなくても試合の中で立て直し、勝ち切る粘り強さを見せました。
しかし準々決勝では、普段から仲の良いダスティ・ボイヤーが立ちはだかります。
第1ゲームはトリスタンが5-0と最高のスタートを切りました。
ところが、ダスティの強烈なフォアハンドをきっかけに一気に流れが変わります。
連続ポイントを許し、最終的には9-11で逆転されました。
試合後、トリスタンが反省点として挙げたのが「もっと早くタイムアウトを取るべきだった」という判断です。
タイムアウト(※プレーを一時停止し、戦術や気持ちを立て直す時間)は、相手の勢いを止めるためにも使われます。
5-0から追いつかれている途中で一度流れを切れていれば、その後の展開が変わった可能性もありました。
第2ゲームでも苦しい展開が続きます。
途中ではダスティがボールを追った際、フェンスで手を切ってしまい、処置のため15〜20分ほど試合が中断しました。
再開後、トリスタンは「バックハンド側なら打ちにくいかもしれない」と判断。
強烈なフォアハンドを避け、バックハンド側を狙う戦術に切り替えます。
10-5とリードされていたところから10-9まで追い上げましたが、最後はダスティが取り切り、トリスタンは再び9-11で敗戦。
結果はベスト8でした。
普段は同じ宿泊先で過ごすほど仲の良い友人でも、試合になれば全力で勝ちにいく。
その切り替えもプロスポーツならではです。
混合ダブルスではサードショットから戦術を変更
混合ダブルスでは、サラ・レミンスとペアを組みました。
最初の大きな山場となったのが、リチャード&ニコラ組との対戦です。
第1ゲームではトリスタンとサラが好スタートを切り、11-6で勝利。サラがフォアハンドから積極的にスピードアップを仕掛け、2人とも安定したプレーを見せました。
スピードアップ(※ゆっくりしたボールの応酬から、突然テンポを上げて攻撃へ切り替えるショット)は、ネット前のラリーで相手の反応を遅らせるために使われます。
ところが第2ゲームでは、相手が戦い方を変更します。
リチャードがより広い範囲をカバーし、積極的に攻撃。ニコラは無理をせず、確実にボールを返し続けました。
その結果、トリスタン組は2-11でゲームを落とします。
第3ゲームに入ると、トリスタンたちも戦術を修正しました。
具体的には、
- リチャードの背後を狙う
- 相手を横方向へ動かしてスペースを作る
- サードショットでドライブを使う
- フィフスショットでドロップを入れる
といった組み立てです。
サードショットドライブ(※サーブ側の3球目を強く打って相手にプレッシャーをかける攻撃)を使い、その次のボールを柔らかいドロップ(※ネット際へ落として前進する時間を作るショット)にすることで、ネットへ近づく形を狙いました。
それでも相手を崩し切れず、第3ゲームは5-11で敗戦となりました。
その後、敗者復活戦では16-14の大接戦を制しています。
しかも相手に複数回のマッチポイント(※あと1ポイントで勝敗が決まる状況)を握られながら逆転しました。
一方でトリスタンは、敗戦から次の試合まで3〜4時間空いたことで、スタート時に集中できなかった点を反省しています。
今後は試合30〜45分前からもう一度体を動かし、メンタルも試合モードへ戻す必要があると分析しました。
混合ダブルスは最終的に敗者復活戦3回戦で15-11の敗戦。
結果以上に、「長い待ち時間をどう使うか」という大会ならではの課題が見つかった一日でした。
ジェイとの男子ダブルス、サイド変更で強豪ペアを撃破
男子ダブルスでは、ジェイ・セントンゼとペアを組みました。
この2人の面白いところは、「誰が左、誰が右」と最初から固定していない点です。
ダブルスでは一般的に、左右それぞれで役割が少し変わります。
相手や自分たちの調子に合わせ、どちらが攻撃を多く担当するかを考えることも重要です。
初戦のマウロ&ダスティ戦では、最初にトリスタンが左、ジェイが右に入りました。
第1ゲームを取ったものの、第2ゲームでは相手が勢いに乗ります。
ダスティが右サイドから強烈な攻撃を仕掛け、マウロは左側で安定したプレーを続けました。
特にマウロの両手バックハンドによるロールディンクが効果的でした。
ロールディンク(※柔らかいディンクに回転を加え、相手が攻撃しにくい高さや軌道にするショット)は、ネット前の駆け引きで使われる技術です。
トリスタンとジェイはコミュニケーションも少なくなり、第2ゲームを落とします。
そこで2人は「もっとエネルギーを出そう」と確認。
トリスタンがディンクを安定して返し、ジェイが攻撃を担当する形を作りました。
さらに途中で左右を入れ替えると、ジェイが終盤の攻撃を引っ張り、トリスタンは右サイドで確実にボールを返す役割へ。
最終的には第3ゲームを11-6で取り、勝利しました。
続くラウンド16ではタナー&アマー組と対戦します。
相手は大会でも上位シードとみられる強豪ペアでしたが、この試合ではトリスタンが右サイド、ジェイが反対側から攻撃する形が機能しました。
ジェイはフリック(※手首を使って瞬間的にボールを加速させるショット)やロールを積極的に使用。
トリスタンは右側から広い範囲に手を伸ばし、攻撃できるボールを狙います。
2人は自信を持ってプレーし、強豪ペアを破って準々決勝へ進みました。
決められた形にこだわるのではなく、その日の状態に合わせてポジションを変える柔軟さが、勝利につながった試合でした。
準々決勝は12-10、10-12の大接戦。「もっと確実に返す」が課題
男子ダブルス準々決勝の相手は、アンドレ・ミレー&ランディ・ブランコ組でした。
2人についてトリスタンは「爆発力があり、とてもパワフル」と評価しています。
特に強烈なドライブと、一気にネットへ詰める攻撃が特徴でした。
第1ゲームは12-10。
接戦の中、トリスタン&ジェイ組が先取しました。
ジェイが積極的に攻撃し、トリスタンは多くのボールを確実に返しながら、チャンスが来たところで攻める形が機能していました。
しかし第2ゲームでは10-12。
あと少しで勝ち切れる展開でしたが、相手に取り返されます。
トリスタン自身は、この試合について「ベストなピックルボールではなかった」と振り返っています。
特に本人が課題として挙げたのは、
- 無理に攻撃しすぎない
- 攻めるボールを正しく選ぶ
- ショットが決まらない日は確実性を優先する
- パートナーにとってプラスになるプレーをする
という部分です。
調子が悪い日に無理なショットを狙うと、自分からミスを増やしてしまいます。
そんな日は「とにかく1球多く返す」という選択も重要です。
第3ゲームは6-11で敗れ、ベスト4進出はなりませんでした。
それでもトリスタンが強く感じたのは、技術以外の部分でした。
特に「ジェイとのコミュニケーション」「エネルギー」「ボディランゲージ」です。
ボディランゲージ(※表情、姿勢、動きなどから伝わる感情や態度)は、ダブルスではパートナーにも影響します。
たとえばミスしたあとに下を向いてしまうと、「自信を失っている」という雰囲気が相手だけでなくパートナーにも伝わります。
逆に、
- ミスのあとでも声を掛ける
- 拳を握って気持ちを見せる
- パートナーが落ちたら盛り上げる
- 次のポイントへすぐ切り替える
といった行動は、ペア全体の雰囲気を変えます。
トリスタンは、この大会を通して「技術がうまくいかない日でも、コミュニケーションと姿勢は自分でコントロールできる」と学びました。
結果はベスト8でしたが、今後さらに上位へ進むための具体的な課題が見えた試合でした。
18歳の一人遠征を支える家族、仲間、先輩選手の存在
大会最後にトリスタンが語ったのは、ショットや戦術ではなく「遠征生活」についてでした。
トリスタンはつい最近18歳になったばかりです。
それでも以前から一人で大会へ移動し、遠征生活を続けています。
自分で移動し、宿泊し、食事を取り、練習時間を決め、翌日の試合に備える。
本人は、この経験について「自分のすることに責任を持てるのが特別」と語っています。
ただし、すべてを完全に一人でやっているわけではありません。
大会会場には仲の良い選手が多く、練習相手になってもらったり、試合についてアドバイスを聞いたりしています。
デトロイトでもダスティ、ナヴィーン、ジェイク・バウアーらと宿泊先や食事を共にしました。
彼らは試合ではライバルですが、コートを離れれば仲間です。
実際、シングルス準々決勝で戦ったダスティも普段は一緒に宿泊するほど親しい選手でした。
こうした「ライバルであり仲間でもある」という関係が、若いトリスタンの成長を支えています。
家族の存在も大きな支えです。
トリスタンには4人のきょうだいがおり、自身は上から2番目。両親は仕事をしながら競技生活をサポートし、都合がつく大会には足を運んでいます。
今後は両親が遠征に同行する機会も増える予定だといいます。
トリスタンが感謝しているのは、単に試合へ出場できることだけではありません。
- 競技を続けられる環境を作ってくれる家族
- 日常を一緒に過ごす選手仲間
- アドバイスを与えてくれる経験豊富な選手
- 一緒に練習してくれるパートナー
こうした人とのつながりそのものを、プロ生活の大切な部分として捉えています。
18歳で勝敗のプレッシャーを受けながら各地を回り、そのたびに「何を学べるか」を考える。
今回のデトロイト大会は、トリスタンにとって単なるベスト8という結果以上に、プロ選手として成長するための材料が詰まった大会になったようです。
まとめ
トリスタン・デュソーのAPPデトロイト大会は、シングルスと男子ダブルスでベスト8に進み、試合中の戦術変更やタイムアウト、サイド変更、ペアとのコミュニケーションなど、多くの実戦経験を得る大会になりました。
特に、調子が悪いときには無理に決めにいかず、確実に1球多く返すという本人の振り返りは、ピックルボールの奥深さを感じさせます。
18歳という若さで一人遠征を続けながら、家族や仲間、先輩選手から学び続ける姿も印象的です。
今後、こうした経験を積み重ねたトリスタンがベスト8の壁を越え、さらに上位へ進んでいけるのか注目したいですね。


