APPメサオープン2025で知るピックルボールプロのリアル|ブランドン・レーンの4日間

コラム

アリゾナ州メサで開催されたAPPメサオープン2025に挑んだブランドン・レーン。


いい試合もあれば、ボコボコにされる試合もある4日間のリアルを、そのまま日記風に語っています。

シングルス、ミックス、ダブルスとフル稼働した彼の視点から、プロツアーの空気感やメンタルの揺れ動き、環境への適応まで、具体的にのぞいてみましょう。

APPメサオープン2025とブランドン・レーンの4日間

ブランドンはフロリダから、砂漠気候のメサへ月曜入りします。


フロリダは湿度高めでボールが重く感じますが、メサは空気が薄く乾いていて、同じ力でもボールが伸びやすい環境です。

その違いに体と感覚をなじませるために、数日前から現地で練習するのがルーティンになっています。

滞在先の巨大Airbnbには「ギャラガ」や「スペースインベーダー」といったレトロゲーム筐体が置かれていて、夜はそれで反応スピードを鍛えるという“遊び半分・練習半分”の過ごし方。


さらに毎年恒例の「大会ヘア」として、今年は髪全体をチーター柄に染色。

見た目からもテンションを上げつつ、「チーターの速さ」をイメージして4日間を戦い切る準備をしていきます。

シングルスDAYで見えた左利き対策とラリースコアリング

シングルス初日にいきなり当たるのは、左利きの友人ケント。


普段は右利きのバックハンド側にボールを集めるパターンが多いブランドンですが、左利き相手だと「安全なコース」と「攻めるコース」が真逆になります。

そのため当日の朝練では、いつもと逆クロスに打つショットや、サーブのコース配分を重点的に調整していました。

若手のエリオット・シュップとの試合では、2ゲーム目でかなり追い上げられながらも要所を締めて勝利。


しかし準々決勝のローナン戦ではリターンミスが連発し、ラリースコアリング(※どちらがサーブでもラリーに勝った側に点が入る方式)では致命傷になります。

風向きや気温の変化でボールが伸びにくくなった感覚もあり、「コンディションと自分の精度、両方を合わせないと勝てない」と痛感する1日になりました。

妻と戦うミックスダブルスと“夫婦対決”のメンタル

ミックスダブルスは、親友のエミリーとペアを組む大会。


ところがドロー表を開いてみると、初戦の相手ペアには自分の妻・グラウカの名前が。

会場には一緒に向かわず、あえて別々の車で来るくらい、いい意味で“ピリピリした空気”で1日が始まります。

試合内容はかなり拮抗し、1ゲーム目は「7-7」で長時間膠着する展開。


ブランドンとエミリーは、相手のバックハンド側の足元を狙うようにボールを集めたり、ロブ※(※高く上げて頭上を抜く球)とドロップ※(※相手コート前方に落とすタッチショット)を混ぜて、グラウカのリズムを崩しにかかります。

一方で心の中では「妻にはあまりキツく打ち込みたくない」という迷いも。


それでもプロとしては「相手の男子はうちのパートナーを本気で攻めてくる」という現実があり、最終的には“仕事モード”に切り替えて勝利を取りにいきます。

試合後は2人で写真や動画を撮影し、“夫婦対決”を乗り越えたからこその絆も感じられる1日になりました。

ベニー・“ボムズ”との男子ダブルスと9位決定トーナメント

男子ダブルスの相棒は、超攻撃型プレーヤーのベニー“ボムズ”・ニューウェル。


ベニーはサーブから3球目、5球目と、チャンスがあればひたすらドライブ(※ネットすれすれを強く通すショット)を打ち込み続けるスタイルで、ブランドンはその後ろでカバーしながら一緒に前へ出る“ハイテンポなダブス”を展開します。

初戦の相手はペースの遅いチームで、序盤は自分たちの速いリズムを封じられ気味に。

そこであえてテンポを落として、ロングラリーの中で相手のバックハンド側にボールを集める戦術に切り替え、じわじわ主導権を取り返します。

ただ、2回戦以降はミスも重なり、9位決定トーナメントに回る結果に。


ここには上位シード落ちのペアも多く、「実力者だらけの裏トーナメント」といった状態になります。

暑さでボールが徐々に重くなり、足も止まりやすいコンディションの中、「今日ダメでも、次の大会で爆発すればいい」と笑い合いながら、経験値を積む時間として前向きに消化していきました。

勝てない日も仕事の日|プロツアーの現実と切り替え

今大会のブランドンは、シングルスで準々決勝、ダブルスでは9位決定トーナメントと、結果だけ見れば“優勝争い”とは言えない内容でした。


それでも彼は「9時5時のデスクワークじゃなくて、プラスチックのボールを打って生活できている。それだけで十分ハッピー」と冗談まじりに語ります。

負けたあとも、すぐに仲間と練習コートに入り直して、さっきの試合でうまくいかなかったパターンをその場で反復。


たとえば「左利き相手にバックサイドをどう使うか」「高い打点でのリターン精度をどう上げるか」といった課題を、ラリー形式で細かく詰めていきます。

気持ちを切り替えるためのポイントは、

  1. その日の試合内容を正直に認める
  2. 具体的な改善ポイントを1〜2個だけ決める
  3. それ以外は「今日のネタ」として笑いに変える
    というシンプルな3ステップ。
    勝った日も負けた日も、全部ひっくるめて“仕事の日”として受け止める姿勢が、長いツアー生活を支えています。

サーフィンとゲームと仲間|コート外の楽しみ方

ブランドンのもう一つの顔はサーファーです。


大会が終わればすぐに「フロリダに戻ったら、波が上がるタイミングで海に入る」と決めていて、結果が良くても悪くても、一度“海でリセット”するのがルーティンになっています。

「この週末だけ見たら、ピックルボールよりサーフィンのほうがまだ得意だね」と笑える余裕も、彼らしさです。

Airbnbでは、夜は仲間とレトロゲームで盛り上がります。


「ギャラガ」で敵の弾をギリギリで避ける感覚は、実は“ボレーの反応速度トレーニング”にも近いものがありますし、「スペースインベーダー」でリズムよくボタンを押す動きもハンドスピードUPに一役買っています。

試合後の食事も重要な時間です。


メキシカンレストランでファヒータやワカモレ、マルガリータを囲みながら、その日の試合を振り返ったり、次の日の作戦会議をしたり。

こうした“コート外の時間”があるからこそ、メンタルが持ち、次の日もまた全力でコートに立てるのだと感じさせてくれるエピソードです。

まとめ

APPメサオープン2025でのブランドン・レーンの4日間は、華やかな優勝ストーリーではなく、「うまくいかない日も含めたプロのリアル」がぎゅっと詰まった内容でした。


左利き対策やラリースコアリングの難しさ、妻との“本気の対戦”、攻撃全開の相棒とのダブルス、暑さと乾燥に対応しながらのコンディション調整——どれも、ピックルボールをガチで続けていく上で誰もがぶつかるテーマです。

それでもブランドンは、負け試合もネタに変え、サーフィンやゲーム、仲間との食事で気持ちを切り替えながら、また次の大会へ向かいます。


ピックルボールを始めたばかりの人も、「プロでもミスするし凹むけど、最後は笑って前に進む」という姿勢を知れば、自分の練習や試合が少し気楽に、そして少し楽しみになるはずです。


結果に一喜一憂しすぎず、あなたなりの“チーター柄”を身にまとって、コートに立ち続けてみてください。

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