ピックルボールのスピン測定を変える新技術|RPMテストを支える専用ボール開発の舞台裏

コラム

パドルがボールにどれだけ強い回転を与えられるのか。その性能を感覚ではなく数値で測るため、USA Pickleballは新しいスピンレートテストを開発しました。

注目ポイントは測定ソフトだけではなく、高速回転を正確に読み取るために作られた専用ボールです。

パドルのスピン性能を測る新しいテスト

USA Pickleballが開発したスピンレートテストは、パドルにボールが当たったあと、どれくらいの回転が生まれたのかをRPMで数値化するテストです。

RPM(※Revolutions Per Minuteの略で、1分間あたりの回転数を示す単位)は、ボールにどれだけ強いスピンがかかっているかを比較するときの分かりやすい指標です。

数値が大きければ、それだけボールが速く回転していることを示します。

ただし、プレーヤーが実際にパドルを振って測定すると、スイングの速さや角度、ボールが当たる位置によって毎回結果が変わってしまいます。

そのため、このテストではできるだけ同じ条件を作ることが重要になります。

測定に必要なのは、主に次の4つです。

  • ボールを一定の条件で飛ばす発射装置
  • 動かないように固定されたパドル
  • 回転を追跡するための専用テストボール
  • RPMを自動計算するモーション解析ソフト

つまり、人の感覚や打ち方に頼るのではなく、「同じボールを、同じようにパドルへ当て、その結果を機械で分析する」という考え方です。

こうすることで、パドルAとパドルBのどちらがよりスピンを生み出しやすいのかを、感覚ではなく数値で比較しやすくなります。

高速で回転するボールを追跡するモーション解析技術

スピンレートテストの中心となる解析技術を開発したのが、Image Systemsです。

同社はモーション解析(※高速で動く物体の位置や向き、回転などを映像や専用ソフトで追跡し、数値として分析する技術)を得意としており、その技術をピックルボールの回転測定に応用しました。

実際のテストでは、特殊なマーカーが付いたボールを発射装置から、固定されたパドルへ向けて飛ばします。

ボールがパドルに近づき、表面に当たり、そこから再び飛び出していくまでの動きを専用システムが追跡します。

その際、ボール表面にある複数のマーカーがどのように動いたのかを細かく読み取ります。

例えば、マーカーAが一瞬で右上から左下へ移動し、別のマーカーBも連続して位置を変えていれば、その変化からボールがどの方向へ、どのくらいの速さで回転しているのかを計算できます。

さらに、取得された映像データはソフトウェアによって自動処理され、最終的にRPMとして出力されます。

人がスロー映像を一つずつ確認して回転数を数える必要がないため、測定する人による判断の差が出にくいのもポイントです。

RPM測定専用ボールには特殊なマーカーを採用

このテストで特に重要なのが、専用に作られたテストボールです。

見た目だけなら通常のピックルボールに印刷が加えられたように見えますが、そのマーカーには大きな役割があります。

モーション解析システムは、ボールそのものを漠然と見ているわけではありません。

ボール表面に配置された複数のマーカーを目印として追跡し、その位置関係の変化から回転速度を計算します。

例えば、ボールがまったく回転していなければ、マーカーの見え方は大きく変化しません。

一方、強いトップスピンやバックスピンが加われば、マーカーの位置は高速で入れ替わります。

そのため、

  • マーカーの大きさ
  • 印刷する位置
  • マーカー同士の間隔
  • ボールに対する向き
  • 印刷後の形状

が正確でなければなりません。

もしマーカーの位置がボールごとにズレていれば、解析ソフト側が同じ条件で回転を読み取れなくなる可能性があります。

つまり、この専用ボールは単なる「計測用のボール」ではなく、解析システムの一部として設計された精密な測定機器のような存在です。

球体への高精度印刷という難しい製造課題

専用ボールの製造を担当したFranklin Sportsが直面したのは、「丸いボールへ正確にマーカーを印刷する」という見た目以上に難しい課題でした。

紙や板のような平らな面なら、決められた位置に同じ形を印刷するのは比較的簡単です。

しかし、ピックルボールは球体です。

球体に平面のデザインをそのまま印刷しようとすると、ボールのカーブに沿って形が引き伸ばされたり、端の部分が曲がったりします。

例えば、平面ではきれいな円に見えていたマーカーが、ボール表面では楕円のように変形して見えることも考えられます。

位置や角度も、わずかなズレが出やすくなります。

しかもスピンテストでは、そのボールが高速で飛びながら回転します。

止まっている状態では問題なく見えるマーカーでも、高速撮影したときに解析ソフトが正しく認識できなければ意味がありません。

さらに難しいのは、「完璧な試作品を1個作る」だけでは足りないことです。

テストで複数のボールを使う以上、

  • 1個目も同じ位置
  • 10個目も同じ位置
  • 別の日に作ったボールも同じ精度

という再現性が求められます。

Franklin Sportsは、ボールの曲面による印刷のゆがみまで計算しながら、マーカーを一定の位置・サイズ・向きで製造できる方法を作り上げました。

3者が1年以上かけて完成させた測定システム

今回のスピンレートテストは、短期間で完成したプロジェクトではありません。

USA Pickleball、Image Systems、Franklin Sportsの3者が1年以上にわたって協力し、解析技術、ボール製造、テスト運用の課題を一つずつ解決していきました。

役割を簡単に整理すると、

  • Image Systems:高速で回転するボールを追跡する解析技術
  • Franklin Sports:解析用マーカーを正確に配置した専用ボールの製造
  • USA Pickleball:両方を組み合わせ、ピックルボール用の測定方法として構築

という形です。

特にImage Systemsのシステムでは、ボールの回転を計算するだけでなく、測定途中で発生した不適切なデータを判別する仕組みも取り入れられています。

例えば、マーカーを正確に読み取れなかった場合や、通常とは異なる動きをしたデータまでそのまま採用すると、最終的なRPMに誤差が生じる可能性があります。

そこで、明らかに信頼性の低いデータを除外し、より安定した測定結果につなげる考え方が使われています。

一方で、どれだけ高性能な解析ソフトがあっても、ボールのマーカー位置が毎回バラバラでは正確な分析はできません。

そのため今回のシステムは、ソフトウェアとボールの両方が同じレベルの精度を持って初めて成立する仕組みになっています。

正確なRPMデータがパドル評価を変えていく

スピンレートテストで目指しているのは、単に「一番回転するパドル」を探すことではありません。

重要なのは、どのパドルをテストしても、できるだけ同じ条件で公平に比較できる環境を作ることです。

例えば、選手が実際にパドルを振るテストでは、

  • スイングスピード
  • 打点
  • パドルの角度
  • ボールへの当て方
  • 選手の疲労

などによって結果が変化します。

一方で、ボールの発射方法とパドルの位置を固定し、専用ボールを使って自動解析すれば、人によるバラつきを減らすことができます。

そこで重要になるのが、次の3つです。

  • Accuracy(※正しい数値を測定できる正確性)
  • Repeatability(※同じ条件で何度測っても近い結果が出ること)
  • Reproducibility(※条件をそろえれば別の測定でも同じような結果を再現できること)

パドルは表面素材や加工方法によって、ボールとの摩擦やスピンのかかり方が変わります。

そのため、「このパドルはスピンが強そう」という感覚的な評価だけではなく、「実際に何RPMだったのか」という数値を使えることには大きな意味があります。

パドルの性能をより客観的に比較しやすくなれば、製品開発や性能評価にも活用しやすくなります。

まとめ

USA Pickleballのスピンレートテストでは、専用ボールを固定されたパドルへ飛ばし、高速モーション解析を使ってボールの回転をRPMとして数値化します。

一見シンプルに見えるテストボールにも、マーカーの位置や形、向きまで細かく管理する高度な製造技術が使われています。

Image Systems、Franklin Sports、USA Pickleballが1年以上かけて開発したことで、同じ条件で繰り返し測定しやすい環境が整いました。

パドルの性能がますます進化するなか、今後はこうした客観的な測定データが、パドル評価や製品開発を考えるうえでさらに重要になっていきそうです。

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