無名に近かったパドルブランド「11SIX24」が、ピックルボール市場で存在感を高めています。
創業者の実体験から生まれた“壊れにくく、使いやすく、個性があるパドル”という考え方を、具体的に解説します。
壊れた高級パドルがブランド誕生のきっかけ
11SIX24の始まりは、かなりリアルなプレーヤー目線の不満からでした。
創業者のデイビッド・グローシェル氏は、ピックルボールを始めて数か月で競技にハマり、安い初心者用パドルから大手ブランドの高級パドルへ買い替えました。
ところが、225ドルもするプレミアムパドルは、使って間もなくネック部分で折れてしまいます。
ネック部分とは、パドルの打球面とグリップをつなぐあたりのことです。
ここが弱いと、強く打ったり、何度も使ったりする中で破損しやすくなります。
さらに別のパドルを買っても、また壊れてしまいました。普通なら「高い買い物だったのに残念」で終わるところですが、グローシェル氏は「それなら自分で作ろう」と考えます。
ここが、11SIX24誕生のスタートです。
最初はワシントンD.C.の約600平方フィートのアパートで、パドルの箱や発送用資材、試作品に囲まれながら販売していました。
まさに自宅が倉庫兼オフィス状態です。
2023年春から夏にかけて、最初の100本はかなり早く売れました。
大きな広告や派手なプロモーションではなく、「ちゃんと使えるパドルが欲しい」というプレーヤーのニーズに刺さったことが、ブランドの第一歩になりました。
11SIX24という名前に込められた個性
11SIX24という名前は、ピックルボールの専門用語や競技ルールから来たものではありません。
由来は、グローシェル氏が過去に参加した「瓶の中のジェリービーンズの数を当てるコンテスト」です。
そのとき彼は、瓶の中に入っていたジェリービーンズの数を「11,624個」とぴったり当てました。
この偶然のようなラッキーな数字が、そのままブランド名になっています。
この話が面白いのは、ブランド名に“創業者本人のストーリー”が入っているところです。
パドルブランドというと、テクノロジー感のある名前や、強さを押し出した名前になりがちです。
でも11SIX24は、どこか遊び心があり、覚えたくなる響きがあります。
さらに、同社のパドル名やモデル名にも、グローシェル氏の好きなものや人生に関係する要素が使われています。
たとえば「Jelly Bean」というモデル名は、ブランド名の由来ともしっかりつながっています。
こうしたネーミングは、単なる商品ではなく「ブランドの世界観」を作ります。
使っている人が「この名前、実はこういう意味なんだよ」と話したくなる。
これは、コミュニティ色が強いピックルボールではかなり大きな武器です。
性能だけでなく、ストーリーや個性もある。
11SIX24が無名ブランドから注目されるようになった背景には、この親しみやすさもあります。
Hurache-Xで一気に注目ブランドへ
11SIX24が大きく注目されるきっかけになったのが、2023年後半に登場した「Hurache-X」です。
これは、独自形状を持つ細長いパドルで、曲線的なトップ部分と長めのハンドルが特徴でした。
パドルとは、ピックルボールでボールを打つためのラケットのような道具です。
テニスラケットより小さく、板状の形をしています。形状、厚み、重さ、表面素材、グリップの長さによって、打感やスピン性能、コントロール性能がかなり変わります。
Hurache-Xのポイントは、既存の型をそのまま使ったパドルではなかったことです。
グローシェル氏は製造業者とつながり、カタログにある一般的な形ではなく、独自の形状でパドルを作れるようになりました。
このタイミングがかなり良かったです。
当時、ピックルボールでは両手バックハンドを使うプレーヤーが増え始めていました。
両手バックハンドとは、両手でグリップを持ってバック側のボールを打つスタイルです。
長めのハンドルは、この打ち方と相性が良く、プレーヤーのニーズに合っていました。
さらに11SIX24は、パドルの構造や素材についてもかなりオープンに説明しました。
どんな素材を使っているのか、なぜその形にしたのか、どんな打感を狙っているのか。
こうした情報を出したことで、ギア好きのプレーヤーから強い支持を集めました。
今では多くのブランドが技術説明を前面に出していますが、当時の11SIX24はかなり珍しい存在でした。
Hurache-Xは、形状、打感、透明性の3つでブランドの名前を一気に広げたモデルです。
価格と品質のバランスが支持された理由
11SIX24がプレーヤーに支持された大きな理由は、価格と品質のバランスです。
同ブランドは、プレミアム品質のパドルを、トップブランドより少し手に取りやすい価格帯で提供することを大切にしています。
たとえば、最新モデルの「Power 2 Series」は209.99ドルで発売されました。
多くの大手ブランドの最上位パドルが250ドル以上で販売されていることを考えると、比較的買いやすい価格です。
ただし、安いだけではブランドは伸びません。
ピックルボールのパドルは、プレーに直接関わる道具です。
価格が少し安くても、打ちにくかったり、すぐ壊れたりすれば、プレーヤーは離れてしまいます。
11SIX24が評価されたのは、「中価格帯なのに、しっかり高性能で、耐久性にもこだわっている」と感じられたからです。
創業者自身が、高いパドルがすぐ壊れた経験をしているため、壊れにくさへの意識がかなり強いのも納得です。
同社は量産前の品質管理テストにも力を入れています。
品質管理テストとは、実際に販売する前に、耐久性や性能の安定性を確認する工程です。
これをしっかり行うことで、プレーヤーが安心して使えるパドルに近づきます。
200ドル以上のパドルを買って、数か月で折れたり性能が落ちたりしたら、正直かなりショックです。
11SIX24は、そこに対するプレーヤーの不満を理解し、「長く使えて納得できるパドル」を目指してきたことが支持につながっています。
耐久性とデザインで差別化する戦略
ピックルボールのパドル市場は、今かなり競争が激しくなっています。
多くのブランドが新モデルを出し、パワー、スピン、コントロール性能をアピールしています。
ただ、競技団体がパワーやスピンに制限を設けるようになると、性能だけで大きく差をつけるのは難しくなります。
そこで11SIX24が力を入れているのが、耐久性、デザイン、ブランド体験です。
Power 2 Seriesでは「HexGrit」という新しい表面技術を採用しています。
グリットとは、パドル表面のザラつきのことです。
このザラつきがあることで、ボールに回転をかけやすくなります。
回転をかけると、ボールを沈ませたり、相手の返球を難しくしたりできます。
HexGritの特徴は、長く使っても表面のザラつきが落ちにくいことです。
パドルは使い込むほど表面が摩耗し、スピン性能が落ちることがあります。
特に練習量が多い人ほど、この劣化は気になるポイントです。
そこを改善しようとしているのが、11SIX24の強みです。
また、デザイン面でも差別化を進めています。
限定カラーや季節感のあるカラー展開は、パドルを単なる道具ではなく「持ちたいアイテム」に変えます。
性能が横並びになりやすい市場では、見た目やブランドの雰囲気もかなり重要です。
これからのパドル選びでは、「強いボールが打てるか」だけでなく、「長く使えるか」「見た目が好きか」「ブランドの考え方に共感できるか」も選ぶ理由になっていきそうです。
まとめ:11SIX24は“使える個性派ブランド”へ
11SIX24は、創業者自身の「高いパドルがすぐ壊れた」という実体験から生まれたブランドです。
その原点があるからこそ、価格、品質、耐久性へのこだわりがはっきりしています。
Hurache-Xでは、長めのハンドルや独自形状で時代の流れをつかみ、ギア好きのプレーヤーから注目されました。
Power 2 Seriesでは、HexGritによる耐久性やスピン性能にも力を入れ、さらにブランドとしての信頼感を高めています。
また、プロ選手にパドルを使ってもらうことで、アマチュア選手にも「試してみたい」と思わせる流れを作っています。
性能だけでなく、ストーリー、透明性、デザイン性を組み合わせて伸びてきたのが11SIX24の面白さです。
今のパドル市場では、ただ高性能なだけでは埋もれてしまいます。
11SIX24は「大手ではないけれど、ちゃんと使えて個性もあるブランド」として、これからさらに存在感を高めていきそうです。




