テニス選手から専業主婦、そして世界ランキング上位のピックルボール選手へ――。
ブルック・バックナー選手の異色のキャリアには、多くの挑戦と努力が詰まっています。
今回は、彼女がトップ選手になるまでの歩みや今後の目標を、初めて知る方にも分かりやすくご紹介します。
テニスから世界トップ選手への転身
ブルック・バックナー選手は、学生時代から全米トップレベルのテニス選手として活躍し、アメリカの名門・ミシガン大学ではディビジョンI(※アメリカ大学スポーツ最高峰のカテゴリー)でプレーしていました。
大学卒業後は競技者としてだけでなく、イェール大学やノースカロライナ大学シャーロット校でテニスコーチを務め、多くの選手を指導してきました。
しかし、自身がプロテニス選手として活動する道は、コーチからの助言を受けて断念することになります。
競技人生に一区切りを付けた後は、指導者として経験を積み、2020年には家庭を優先するため専業主婦として新しい生活をスタートさせました。
その後、まさか世界トップクラスのピックルボール選手になるとは、本人も想像していなかったと語っています。
一度競技から離れても、新たな競技で才能を開花させたブルック選手の歩みは、多くのアスリートに希望を与えるストーリーといえるでしょう。
ピックルボールとの運命的な出会い
ブルック選手がピックルボールを始めたきっかけは、とても身近なものでした。
新型コロナウイルスの流行により生活スタイルが大きく変化し、競技から離れて家庭中心の生活を送っていたある日、母親から「一緒にピックルボールをやってみない?」と誘われたのです。
最初は健康づくりや気分転換のつもりで地域のレクリエーションリーグ(※初心者から経験者まで気軽に参加できる地域大会)へ参加していました。
しかし、長年テニスで培ってきた強力なグラウンドストローク(※ボールをワンバウンド後に打つ基本ショット)やフットワーク、試合勘がそのまま武器となり、周囲を驚かせるスピードで実力を伸ばしていきます。
ブルック選手自身も「当時はシングルス(※1対1で戦う試合)の専門練習はほとんどしていなかった」と振り返っています。
それでも試合経験を重ねるたびに成長し、短期間でプロツアーへの切符をつかみました。
テニス経験を持つ選手がピックルボールへ転向する例は増えていますが、ここまで短期間で世界ランキング上位へ駆け上がったケースは非常に珍しい存在です。
世界トップ選手との熱戦から得た経験
ブルック選手の実力が世界中に知られるきっかけとなったのが、女子ピックルボール界の絶対的エース、アナ・リー・ウォーターズ選手との対戦でした。
2025年のPPAメサ大会では、世界最強といわれる相手に対して序盤から積極的に攻撃を仕掛け、一時は9対4までリードする展開となります。
しかし、試合終盤になるとウォーターズ選手が徐々にペースをつかみ、流れが一変。
ブルック選手は惜しくも逆転負けを喫しました。
それでも世界トップ選手をあと一歩まで追い詰めた試合内容は、多くのファンや関係者に強いインパクトを与えました。
ブルック選手は「あの試合を経験したことで、自分にも世界一へ挑戦できる力があると確信できた」と語っています。
そして「現役中に一度はウォーターズ選手に勝ちたい」という目標を掲げ、現在も技術だけでなく試合運びや精神面の強化に取り組んでいます。
テニス界レジェンドとの交流
ブルック選手は、現在使用しているパドルメーカー「JOOLA」を通じて、テニス界の伝説的プレーヤーであるアンドレ・アガシ氏やシュテフィ・グラフ氏と交流する機会にも恵まれました。
特に印象深かった出来事として、悔しい敗戦を経験した直後にアガシ氏から励ましのメッセージが届いたことを挙げています。
世界最高峰で数々の勝負を経験してきたアガシ氏だからこそ伝えられる言葉は、ブルック選手にとって大きな支えとなりました。
また、グラフ氏からもトップ選手としての考え方や競技への向き合い方について刺激を受けたそうです。
競技は違っても、一流選手同士だからこそ共有できる経験や考え方があり、その交流はブルック選手の成長に大きく影響しています。
ダブルスへの新たな挑戦
シングルスで世界ランキング上位まで上り詰めたブルック選手ですが、現在はケイトリン・クリスチャン選手との新しいダブルス(※2人1組で戦う種目)にも力を入れています。
ダブルスでは、自分一人の技術だけでは勝てません。
パートナーとのポジション取りや役割分担、試合中のコミュニケーションなど、多くの要素が勝敗を左右します。
シングルスとは異なる戦術が求められるため、新しい挑戦でもあります。
ブルック選手は持ち前の強烈なストロークを武器にしながら、前衛と後衛の連携や試合中の判断力も磨いています。
将来的にはダブルスでも優勝争いの常連となることを目標に掲げ、さらなるレベルアップを目指しています。
ブルック・バックナーが示す可能性
ブルック選手の魅力は、競技成績だけではありません。
家庭では母親として子育てをしながら、世界トップレベルの選手としてトレーニングや遠征を続けています。
プロスポーツと家庭を両立することは決して簡単ではありませんが、「子どもに挑戦する姿を見せたい」という思いが大きな原動力になっているそうです。
また、テニスからピックルボールへ転向し、短期間で世界ランキング上位まで成長した経験は、「新しいことに挑戦するのに遅すぎることはない」というメッセージにもつながっています。
今後はシングルスだけでなくダブルスでもさらなる飛躍が期待されており、世界のピックルボール界をけん引する存在として、多くのファンから注目を集め続けています。
まとめ
ブルック・バックナー選手は、テニス選手、大学コーチ、専業主婦という異色の経歴を経て、世界トップクラスのピックルボール選手へと成長しました。
母親の勧めで始めた競技が人生を大きく変え、世界最高峰の舞台で活躍するまでになったストーリーは、多くの人に挑戦する勇気を与えてくれます。
シングルスでは世界女王アナ・リー・ウォーターズ選手への初勝利を目標に掲げ、ダブルスでもタイトル獲得を目指すブルック選手。
今後も世界のピックルボール界を盛り上げる存在として、さらなる飛躍に期待が高まります。


