米国で70施設以上を展開する屋内ピックルボール大手「ザ・ピックラー」が、2026年10月9日に破産申請しました。
急成長を続けていた人気クラブに、いったい何が起きたのでしょうか?
約40施設の賃貸契約問題や巨額の赤字、施設の営業状況、業界への影響まで詳しく解説します。
- ザ・ピックラーが破産申請!70施設以上を展開する大手に何が起きた?
- 経営悪化の原因は約40施設の賃貸契約!負債総額は約1,900万ドル
- 売上1,030万ドルでも440万ドルの赤字
- 2021年創業から急拡大!会員制ピックルボール施設の成長戦略
- 屋内施設なら天候を気にせずプレーできる
- 1施設の建設費は100万ドル超!急成長を支えたビジネスモデルの課題
- ライバル施設の増加も経営に影響
- 既存クラブは営業継続!450万ドル規模の支援と今後の再建計画
- 投資家グループが再建資金を提供
- ピックルボール人気は終わる?競技人口2,270万人の成長市場を分析
- 競技人口だけでなく施設数も急増
- 日本のピックルボール市場にも関係する問題
- まとめ
ザ・ピックラーが破産申請!70施設以上を展開する大手に何が起きた?
米国ユタ州に本拠を置く「ザ・ピックラー(The Picklr)」の運営会社が、2026年10月9日、テキサス州北部地区の米連邦破産裁判所に破産法第11章の適用を申請しました。
ザ・ピックラーは、米国内に70以上の屋内ピックルボール施設を展開する大手チェーンです。
天候を気にせずプレーできるコートや、会員向けの練習プログラムを提供し、人気を集めてきました。
そんな急成長企業の突然の破産申請に、驚いたプレーヤーも少なくありません。
ただし、今回の破産申請は、会社をすぐに清算するためのものではありません。
同社が申請した「チャプター11(※)」は、事業を継続しながら借金や契約条件を整理し、経営再建を目指す米国の制度です。
つまり、破産申請したからといって、すべてのコートが閉鎖されるわけではないのです。
今回の申請対象は主に親会社であり、独立したフランチャイズ加盟店の施設は原則として営業を続ける方針が示されています。
今回のニュースのポイント
- 破産申請日:2026年10月9日
- 申請企業:ピックラー(Picklr Inc.)
- 申請先:米連邦破産裁判所テキサス州北部地区
- 対象制度:チャプター11
- 米国内の展開規模:70施設以上
- 現状:事業を継続しながら財務再建を進める方針
※チャプター11:米国の企業再建を目的とする破産手続きです。
日本の民事再生手続きに近い制度で、裁判所の管理のもと、債務の整理や経営の立て直しを進めます。
経営悪化の原因は約40施設の賃貸契約!負債総額は約1,900万ドル
今回の経営危機で特に注目されているのが、約40施設に関係する賃貸契約です。
ザ・ピックラーは、フランチャイズ(※)という方式で店舗を増やしてきました。
ところが初期の出店では、加盟店が施設を借りる際、本部が家賃の支払いを保証する契約を結んでいたのです。
通常、加盟店が施設を運営する場合、家賃や人件費などは加盟店側が負担します。
しかし、本部が保証人になると、加盟店が支払いを続けられなくなった場合、本部にも支払い義務が生じる可能性があります。
こうした保証契約が約40施設に広がり、本部の財務を圧迫する結果になりました。
創業者兼CEOのホルヘ・バラガン氏も、保証契約を結びすぎたことについて、自らの責任を認めています。
売上1,030万ドルでも440万ドルの赤字
ザ・ピックラーの財務状況を見ると、経営の厳しさが具体的にわかります。
| 項目 | 金額 |
| 2025年の売上高 | 約1,030万ドル |
| 2025年の純損失 | 約440万ドル |
| 2026年3月末の負債総額 | 約1,900万ドル |
2025年は1,000万ドル以上の売上があった一方、約440万ドルの最終赤字を計上しました。
これは、売上を伸ばすだけでは、施設展開に伴う費用や財務負担を吸収できていなかったことを示しています。
なお、約1,900万ドルは負債総額であり、すべてが直ちに返済期限を迎える借金という意味ではありません。
同社は今回の再建手続きで、施設の貸主と賃貸契約の条件を見直す方針です。
※フランチャイズ:本部のブランドや経営ノウハウを利用し、独立したオーナーが店舗を運営する仕組みです。
2021年創業から急拡大!会員制ピックルボール施設の成長戦略
ザ・ピックラーの創業は2021年。米国でピックルボール人気が一気に高まり始めた時期でした。
2023年にフランチャイズ事業をスタートすると、店舗網を急速に拡大。2026年には米国内で70以上の施設を展開するまでに成長しました。
さらに、カナダ、オーストラリア、日本にも事業を広げています。
ここまで急拡大できた背景には、プレー場所を求める人の増加がありました。
ピックルボールは、初心者から経験者まで幅広い年代が楽しめるスポーツとして人気を集めています。
しかし、プレーヤーが急増すると、今度はコートの不足が問題になります。
そこで注目されたのが、屋内専用施設です。
屋内施設なら天候を気にせずプレーできる
屋外コートの場合、雨や強風、真夏の暑さなどによってプレー環境が左右されます。
その点、屋内施設なら年間を通じて比較的安定した環境で練習や試合を楽しめます。
ザ・ピックラーでは、会員向けにコート利用、オープンプレー(※)、技術指導を受けられるクリニックなどを提供してきました。
単にコートを貸すだけでなく、プレーヤー同士が交流できる場所としても展開してきたのが特徴です。
ただし、短期間で施設を増やすと、建設費や家賃などの負担も同時に膨らみます。
ザ・ピックラーの事例は、利用者の増加を見込んだ積極的な出店が、必ずしも安定した収益につながるわけではないことを示しています。
※オープンプレー:参加者同士がその場でペアや対戦相手を組み替えながら、気軽に試合を楽しむプレー形式です。
1施設の建設費は100万ドル超!急成長を支えたビジネスモデルの課題
ザ・ピックラーの施設は、一般的なスポーツ教室とは規模が異なります。
1施設あたり平均約10面のコートがあり、建設費は100万ドルを超えるとされています。
広い屋内スペースに加え、コートの整備、照明、空調、更衣室などにも費用がかかります。
こうした設備を維持するためには、施設を継続的に利用してくれる会員の確保が欠かせません。
同社では、定額の年会費を支払うことでコート利用や練習プログラムなどを利用できる会員制モデルを採用しています。
この仕組みは、施設側が継続的な会費収入を確保しやすいメリットがあります。
一方、利用者が想定より少なければ、大きな固定費が経営を圧迫します。
ライバル施設の増加も経営に影響
特に都市部では、ピックルボール専用施設の新規出店が相次いでいます。
プレーヤーにとって選択肢が増えるのはうれしいことですが、運営会社にとっては競争が激しくなることを意味します。
例えば、近隣に料金の安い施設ができれば、既存施設も価格やサービスを見直す必要が出てきます。
さらに、フランチャイズ加盟店は本部に対してロイヤルティ(※)やマーケティング費用を支払います。
家賃、人件費、設備維持費などに加えて、こうした支出も発生するため、十分な利用者数を確保できなければ利益を残すことが難しくなります。
ザ・ピックラーの急成長は、会員制スポーツ施設の可能性を示す一方、施設の規模と利用者数のバランスがいかに重要かを浮き彫りにしました。
※ロイヤルティ:加盟店が本部のブランドや運営システムを利用するために支払う費用です。
既存クラブは営業継続!450万ドル規模の支援と今後の再建計画
破産申請を受けて、既存会員にとって最も気になるのは、普段利用している施設が今後どうなるのかという点です。
ザ・ピックラーは、今回の破産申請によって直ちにクラブが閉鎖されることはないと説明しています。
多くの施設は独立したフランチャイズオーナーが所有・運営しており、親会社の再建手続きとは区別されています。
ただし、すべての施設の長期的な営業継続が保証されたわけではありません。
バラガンCEOは、今後、一部の事業縮小が起こる可能性にも言及しています。
投資家グループが再建資金を提供
財務再建に向けては、投資家でありフランチャイズ加盟店のオーナーでもあるトム・ニール氏が率いるグループが資金支援を表明しています。
支援額は会社発表で450万ドル。
スポーツ・ビジネス・ジャーナル系の報道では480万ドルと伝えられており、金額には報道上の違いがあります。
いずれも裁判所の承認などが関係する計画段階の資金です。
再建に向けた主な取り組みは次の3つです。
- 施設の賃貸契約を見直す:貸主と交渉し、加盟店や本部の負担軽減を目指します。
- 資金調達で事業継続を支える:再建中に必要な資金を確保し、経営の安定化を図ります。
- 施設ごとの収益性を改善する:利用状況や運営費を見直し、長期的に継続できる経営を目指します。
バラガンCEOは、今後18か月から2年程度を見据え、加盟店が安定して事業を続けられる状態を目指す考えを示しています。
今後は、支援資金の承認状況や契約交渉の結果に注目が集まりそうです。
ピックルボール人気は終わる?競技人口2,270万人の成長市場を分析
ザ・ピックラーの破産申請によって、「ピックルボールのブームが終わるのでは?」と心配する声もあります。
しかし、競技人口のデータを見ると、スポーツそのものの人気がなくなったわけではないことがわかります。
米国のスポーツ&フィットネス産業協会(SFIA)の2025年の報告では、ピックルボール参加人口は約2,270万人に達しています。
2020年の約420万人と比較すると、約5.4倍の規模です。
米国のピックルボール参加人口の推移
| 年 | 参加人口 |
| 2020年 | 約420万人 |
| 2024年 | 約1,980万人 |
| 2025年 | 約2,270万人 |
※2025年は同年8月時点の報告で紹介された推計値です。
一方で、競技人口の増加ペースには変化が見られます。
2024年の参加人口増加率は45.8%でしたが、SFIAが発表した2025年上半期の指標では14.7%となりました。
増加率は落ち着いてきているものの、SFIAは引き続きピックルボールを成長率の高いスポーツとして位置づけています。
競技人口だけでなく施設数も急増
原文で紹介されているデータによると、2024年にはピックルボール専用施設の数が55%増加し、コート総数も23%増加しました。
これだけ施設が増えれば、地域によっては利用者を獲得するための競争が激しくなります。
仮に競技人口が増え続けていても、同じエリアに施設が集中すると、すべてのクラブが十分な会員を確保できるとは限りません。
施設ごとに必要な利用者数、家賃、建設費なども異なるため、人気スポーツの施設だから必ず利益が出るというわけではないのです。
日本のピックルボール市場にも関係する問題
今回のニュースは、日本でピックルボール施設の開設や運営を考える人にとっても参考になる事例です。
米国のように競技人口が急増した市場では、施設の増加とともに競争や運営コストの問題が表面化しています。
日本でも今後、専用コートや屋内施設が増えていけば、利用料金、立地、会員数、運営コストなどのバランスが重要になるでしょう。
特に新しい施設を開設する際には、競技人気だけを判断材料にせず、継続的に利用してもらえる環境づくりが求められます。
米国で起きている今回の出来事は、ピックルボール市場が成長していくうえで、どのような課題が生まれるのかを考えるきっかけになりそうです。
まとめ
ザ・ピックラーの破産申請は、急成長を遂げたピックルボール施設チェーンが、賃貸契約の保証や高額な運営費によって経営危機に直面した事例です。
一方、米国の競技人口は引き続き増加しており、今回のニュースだけでピックルボール人気の終わりを判断することはできません。
これからの業界には、施設の数を増やすだけでなく、プレーヤーが通いやすい環境と安定した経営を両立することが求められます。
ザ・ピックラーが財務再建を進められるのか、そして世界のピックルボール市場がどのように成長していくのか、今後の動きにも注目していきたいですね。


