世界的な航空宇宙企業ボーイングのエンジニアから、プロピックルボール選手へ。
レイシー・シュニーマンは約1年間悩み抜いた末、安定した仕事を辞める決断をしました。
現在はPPAツアーやMLPで活躍し、女子世界トップ5入りを目指しています。
異色の経歴から攻撃的なプレースタイル、プロ転向を後押しした出来事まで、その挑戦の舞台裏を紹介します。
ボーイングのエンジニアからプロ選手へ!異色の経歴と競技との出会い
プロピックルボール界には、テニスやほかのスポーツから転向してきた選手が数多くいます。
その中でも、レイシー・シュニーマンは少し変わった経歴の持ち主です。
彼女が以前勤めていたのは、航空機や宇宙関連機器を開発・製造する世界的企業ボーイング。
航空宇宙分野の製品設計エンジニアとして働いていました。
シュニーマンは、アメリカ・テキサス州サンアンジェロ出身。
幼い頃からさまざまなスポーツに親しみ、特にテニスに打ち込んでいました。
南カリフォルニア大学(USC)では航空宇宙工学を専攻し、2019年に学士号、2020年に航空宇宙工学と機械工学の修士号を取得しています。
大学時代にはクラブテニスチームでも活動し、2年間キャプテンを務めました。
さらに、NASAのジェット推進研究所(JPL)やAppleでのインターンシップも経験しています。
ピックルボールとの出会いは2015年。
父親と一緒にプレーしたことがきっかけでした。
その後、2021年頃から本格的に競技へ取り組むようになり、2022年にはプロとして大会に出場するようになります。
エンジニアとしてのキャリアを積みながら、競技でも高いレベルを目指す。そんな二足のわらじの生活が始まりました。
仕事と大会を両立した過酷な日々!2023年6月に退職を決断
シュニーマンは、最初から仕事を辞めてプロ選手になったわけではありません。
ボーイングで働きながら大会に出場し、約1年以上にわたって仕事と競技を両立していました。
平日はエンジニアとしてフルタイムで勤務し、仕事が終わった後に練習。
週末には大会に出場するという生活です。
本人によると、特に大変だったのは大会から戻った月曜日でした。
試合の疲労だけでなく、遠征による移動や精神的な負担も大きく、週明けの仕事が最もつらかったと振り返っています。
職場の理解があり、金曜日の混合ダブルスに出場する際などには休暇や勤務時間を調整できたものの、長期的に続けるのは難しいと感じていました。
そんな中、プロ転向を後押ししたのが、MLPの大会で得られた賞金です。
番組では、負傷したチームメートの代役として出場した経験や、メサでのMLP大会で得た賞金が、退職する自信につながったと語っています。
そして2023年6月7日、シュニーマンはボーイングを退職しました。
約1年間にわたってメリットとデメリットを書き出し、考え続けた末の決断でした。
プロとして本格的に活動するため、安定したエンジニアの仕事を手放したのです。
PPAツアーとMLPで活躍!女子トップ選手としての実績
プロ転向後のシュニーマンは、PPAツアーとメジャーリーグ・ピックルボール(MLP)を主戦場に活動しています。
PPAツアーは、シングルス、女子ダブルス、混合ダブルスなどでプロ選手が競い合う大会シリーズです。
一方、MLPはチーム同士で対戦するプロリーグ。
個人の技術に加え、パートナーとの連携やチームとしての戦略も重要になります。
シュニーマンは、こうした異なる大会形式の中で経験を積み、女子トップ選手の一人として活躍してきました。
PPAツアーの公式プロフィールでは、女子ランキング世界10位、ツアー優勝1回、決勝進出7回、準決勝進出23回という実績が掲載されています。
さらに、彼女の対応力がよく分かるのが、メサでの大会のエピソードです。
混合ダブルスではジャック・ソックと組み、ジョージャ・ジョンソン&JWジョンソン組を6点、6点に抑えて勝利しました。
しかし、その数日後には、アナ・リー・ウォーターズ&アナ・ブライト組に0-11、0-11で敗北。
わずか14分で試合が終わる厳しい経験をしました。
それでも翌日には立て直し、銅メダルを獲得しています。
大きな勝利もあれば、完敗することもある。
それでも次の試合に向けて気持ちを切り替え、結果を残せるところが、彼女の強みといえそうです。
※混合ダブルス:男性選手と女性選手が1人ずつペアを組んで戦う形式です。
※MLP:メジャーリーグ・ピックルボールの略称で、プロ選手がチームに所属して戦うリーグです。
男子ダブルスから学んだ攻撃スタイル!フォアハンドが最大の武器
シュニーマンのプレーで特に注目したいのが、男子ダブルスの影響を受けた攻撃的なスタイルです。
番組では、共同司会者のロスコー・ベラミーとジャレッド・ポールが、彼女の積極的な攻撃や幅広い対応力について質問しています。
ダブルスでは、ネットに近いキッチンライン(※)付近でのラリーが勝敗を左右することがあります。
相手のショットに素早く反応し、わずかなチャンスを見つけて攻撃する。
そのためには、手首の使い方やパドルを動かすスピードが重要です。
身長約163cmのシュニーマンは、手首を柔軟に使ったショットや素早いパドル操作を取り入れています。
特に大きな自信を持っているのがフォアハンドです。
本人は、調子が良いときのフォアハンドについて、プロの世界でもトップクラスだと考えています。
フォアハンドは、パドルを持つ手の側でボールを打つショットです。
強打だけでなく、相手の足元を狙ったり、コースを打ち分けたりする際にも使われます。
シュニーマンのような攻撃的な選手にとっては、得点につながる重要な武器です。
また、番組では世界最高レベルのペアを倒すために必要なことについても語っています。
相手の攻撃に耐えるだけでなく、自分たちからプレッシャーをかけること。
そして、攻めるべきタイミングを見極めることが、トップレベルのダブルスでは重要になります。
※キッチンライン:ネットから約2.13mの位置にあるノンボレーゾーンの境界線です。
ネット付近での攻防において重要な位置となります。
※フォアハンド:パドルを持つ手の側で打つショットです。
強打やコントロールショットなど、さまざまな場面で使用します。
収入への不安と世界トップ5への挑戦!プロ選手としての覚悟
エンジニアの仕事を辞めたことで、シュニーマンの生活は大きく変わりました。
プロ選手として練習に使える時間が増え、遠征や大会への出場予定も組みやすくなった一方、経済的なプレッシャーは以前よりも大きくなりました。
2024年のインタビューでは、プロ転向後の変化について、練習時間が増えることにはメリットがあるものの、競技が収入源になることで結果を求めるプレッシャーも強くなったと説明しています。
それまでは仕事とは別に楽しんでいた競技が、生活を支える仕事になったのです。
大会での成績が収入にも関わるため、勝敗に対する気持ちも変化しました。
特に、安定した収入源がなくなったことで、精神的な負担への対応も必要になったそうです。
ただし、シュニーマンはプロ転向について後悔していないと語っています。
そして現在、彼女が目標に掲げているのが女子ランキングトップ5入りです。
すでに世界トップ10圏内で戦っているものの、さらに上を目指したいという思いがあります。
そのためには、トップ選手との対戦で勝利を重ね、年間を通して安定した成績を残すことが重要です。
安定した仕事を手放した決断を、競技での成長につなげられるか。
シュニーマンにとって、これからも大きな挑戦が続きます。
航空宇宙エンジニアに戻る可能性は?シュニーマンが描く将来
シュニーマンのキャリアで興味深いのは、プロスポーツ以外にも専門的な仕事の経験があることです。
南カリフォルニア大学で航空宇宙工学を学び、NASA関連施設やAppleでのインターンシップを経験。
さらに、ボーイングではエンジニアとして実務経験を積んでいます。
こうした経歴は、プロスポーツ選手としては珍しいものです。
本人は過去のインタビューで、エンジニアとして身につけた考え方が、ピックルボールにも役立つ可能性があると話しています。
例えば、ボールを打つ角度や軌道、パドルの素材による違いなど、物理学や工学の知識と関連する部分です。
また、感覚だけでプレーするのではなく、状況を分析しながら賢く戦うことも意識していると説明しています。
番組では、将来的に航空宇宙業界へ戻る可能性についても質問されています。
シュニーマンは以前から、競技生活を終えた後に航空宇宙分野へ復帰する選択肢を否定していません。
ただし、現時点で復帰時期や具体的な転職先が決まっているわけではありません。
今はプロ選手としてのキャリアに集中し、世界トップ5入りという目標に向かっています。
航空宇宙エンジニアとして培った分析力と、プロアスリートとして磨いてきた競技力。
異なる2つの分野で経験を積んできたシュニーマンが、今後どのようなキャリアを築くのかも楽しみです。
まとめ
レイシー・シュニーマンは、ボーイングの航空宇宙エンジニアとして働きながらプロ大会に出場し、2023年6月に競技へ専念する道を選びました。
現在はPPAツアーやMLPで活躍し、男子ダブルスから影響を受けた攻撃的なプレースタイルと自信のあるフォアハンドを武器に戦っています。
安定収入を手放すプレッシャーを乗り越え、次に目指すのは女子世界トップ5入りです。
エンジニアとしての経験も生かしながら、さらに上のステージへ挑むシュニーマンの今後に注目です!


