ウィル・フェレルやエマ・ワトソンら著名人がピックルボールで対決したテレビ企画「PICKLED」。
プレーのレベルには厳しい声も集まりましたが、実はこの番組、ピックルボールが一部の愛好家だけの競技から大衆文化へ広がっていることを象徴する出来事でもありました。
セレブが挑戦した「PICKLED」とは?
「PICKLED」は2022年、アメリカのテレビで放送されたセレブ参加型のピックルボール企画です。
司会を務めたのは、人気コメディアンとして知られるスティーヴン・コルベア。
複数の著名人がチームを組み、ピックルボールで対戦しました。
出演者には、俳優のウィル・フェレルやエマ・ワトソン、歌手のケリー・ローランド、元プロボクシング世界王者のシュガー・レイ・レナードなど、多彩な顔ぶれが参加しています。
大会の目的は、プロ選手による最高レベルの試合を見せることではありません。
著名人がピックルボールに挑戦しながら、チャリティーにつなげるエンターテインメント企画でした。
そのため試合の雰囲気も、本格的な競技大会とはかなり違います。
- ピックルボール経験の少ないセレブが中心
- 勝敗だけでなく笑いや演出を重視
- 著名人同士の対戦を楽しむテレビ企画
- チャリティーを目的としたイベント
当時、ピックルボールの人気が急速に広がっていたこともあり、大きなテレビ番組で競技が扱われること自体を喜ぶファンも少なくありませんでした。
「ついにピックルボールがここまで来た」という期待感があったわけです。
ファンからは「レベルが低い」と厳しい声も
ところが実際に番組が放送されると、ピックルボールファンからは厳しい意見も相次ぎました。
特に目立ったのが、「プレーのレベルが低すぎる」という声です。
普段から試合を見たり、自分自身でピックルボールをプレーしたりしている人からすれば、テレビで大々的に扱われるなら、華麗なラリーや戦術的な攻防を期待したくなるところです。
しかし「PICKLED」に登場したのは、ほとんどがピックルボール経験の浅いセレブたちでした。
そのため、
- ラリーがなかなか続かない
- パドルにうまくボールが当たらない
- ポジショニングが分からず動きが止まる
- 本格的な戦術がほとんど見られない
といった場面も多くありました。
さらに番組では、ピックルボールに関するダジャレやコミカルな演出も頻繁に登場しました。
これに対して、「競技を笑いものにしているように見える」「せっかくテレビで紹介するなら、プロ選手のプレーも見せてほしかった」と感じたファンもいたようです。
つまり批判の背景には、単純に「下手だった」という不満だけではありません。
ピックルボールを本格的なスポーツとして認めてもらいたいファンにとって、テレビで“おふざけ競技”のように映ることへの抵抗感もあったのです。
実際のプレーはどれくらいのレベルだった?
では、「PICKLED」の出演者たちは実際にどのくらいのレベルだったのでしょうか。
元記事の筆者は、多くの出演者について「良くてもレーティング2.5程度」と評価しています。
※レーティング:ピックルボールの実力を数字で示した目安です。
一般的に数字が高いほど競技レベルも高くなります。初心者から経験を積むにつれて数値も上がっていきます。
2.5前後というと、基本的なルールを理解し、ある程度ラリーはできるものの、ショットの安定性や戦術面にはまだ課題がある段階です。
もちろんテレビ出演者なので、全員が公式レーティングを持っていたという意味ではありません。
あくまでプレーを見た筆者によるレベル感の評価です。
そのなかで比較的高く評価されていたのが、ウィル・フェレルとエマ・ワトソンです。
2人には、ラケットスポーツの感覚を思わせる動きや、練習すればもっと上達しそうな可能性が感じられたとしています。
また、元プロボクシング世界王者のシュガー・レイ・レナードは、甘く浮いたボールを決める場面では良さを見せました。
一方で、出演者全体を見ると、
- パドルのコントロールが安定しない
- ボールとの距離感がつかめていない
- 相手の動きを見てコースを変える余裕が少ない
- ネット前での細かな駆け引きがほとんどない
という状態でした。
プロ選手の試合で見られるような高速ラリーや戦術的な攻防を期待すると、確かに物足りなかったでしょう。
ただ逆に言えば、「初心者が初めてピックルボールをすると、こんな感じ」というリアルな姿でもありました。
ピックルボールを笑いにしても大丈夫?
「PICKLED」への批判で特に興味深いのが、「ピックルボールを笑いのネタにしている」という意見です。
番組では競技名に絡めたダジャレをはじめ、コメディ番組らしい演出がふんだんに盛り込まれていました。
競技を真剣にプレーしている人からすれば、「もっとスポーツとして扱ってほしい」と感じるのも分かります。
ただし元記事の筆者は、ここにかなり違う視点を提示しています。
それは、「そもそもスポーツは、冷静に考えれば全部ちょっと変では?」というものです。
例えばテニスなら、ネットを挟んで小さなボールを打ち合い、決められた線の内側に落とします。
バスケットボールなら、ボールを手で運びながら高い位置にあるリングへ入れます。
ゴルフなら、小さなボールを何度も打ちながら、最終的に地面にある小さな穴へ入れます。
どのスポーツにも独自のルールがあり、知らない人から見れば不思議に感じる部分があります。
もちろんピックルボールも同じです。
特に「Pickleball」というユニークな名前は、それだけでもジョークの題材になりやすいでしょう。
大切なのは、笑われないことではなく、笑われたくらいで競技の価値が変わらないことです。
人気が高まり、多くの人に知られれば知られるほど、パロディーやジョークの題材になる機会も増えます。
それはある意味、「誰も知らないスポーツ」から抜け出した証拠とも言えます。
番組出演はピックルボール人気の証拠
「PICKLED」を競技レベルだけで評価すると、確かに物足りない番組だったかもしれません。
しかし、ピックルボールの普及という視点から見ると、かなり象徴的な出来事です。
なぜなら、大きなテレビ番組がわざわざピックルボールを題材にするということは、それだけ一般の人たちが競技に興味を持っているということだからです。
※メインストリーム:一部の愛好家だけではなく、一般の人にも広く知られ、社会の中で定着している状態のことです。
競技人口が少なく、ほとんど知られていないスポーツなら、著名人を集めた大型テレビ企画の題材にはなかなかなりません。
しかも「PICKLED」で興味深いのは、出演者たちが上手ではなかったことです。
プロ選手だけを見せれば、「すごい。でも自分には無理そう」と感じる人もいます。
一方、セレブたちがミスをしながら笑ってプレーする姿なら、「これなら自分でもできそう」と感じる人もいるでしょう。
ピックルボールの強みのひとつは、最初から完璧な技術がなくてもゲームを始めやすいことです。
初めてパドルを握った人でも、ボールを打ち返せればラリーが生まれます。
少し続くだけでも、それだけで結構楽しいものです。
そう考えると「PICKLED」は、競技の高度な部分よりも「始めやすさ」を見せた番組だったと言えます。
上手さより「楽しさ」が伝わったことに意味がある
もちろん、番組として改善できる部分もありました。
元記事の筆者も、「もう少しレベルの高いプレーを見たかった」としています。
例えば、ピックルボールらしいネット付近での素早いラリーが何度か見られれば、「こんなにスピーディーな競技なんだ」と伝わったでしょう。
※ネット前のラリー:ネットに近い位置で、短い距離からテンポよくボールを打ち合うプレーです。
ピックルボールでは相手との距離が近いため、反応の速さだけでなく、コースやタイミングを読む駆け引きも重要になります。
また、初心者向けに基本ルールを少し説明するコーナーがあっても良かったかもしれません。
例えば、
- サーブはどこから打つのか
- 得点はどのように入るのか
- ネット付近でボレーできないエリアがある理由
- どこに立つとラリーしやすいのか
といったポイントが分かれば、初めて見る人も試合を理解しやすくなります。
※ボレー:ボールを地面にバウンドさせる前に直接打ち返すショットです。
それでも番組で最も重要だったのは、出演者たちが楽しそうだったことです。
経験が少なくても、ミスをしても、笑いながらゲームを続けられる。
これはピックルボールの入り口としてかなり大事な要素です。
スポーツというと「まず上手くならなければ楽しめない」と考えがちですが、ピックルボールはむしろ逆です。
まず遊んでみる。楽しいから、もう一度やる。そして少しずつ上達する。
「PICKLED」が見せたのは、まさにその最初の一歩だったのかもしれません。
まとめ
「PICKLED」は、プロの高度な技術を見せる本格的なピックルボール大会ではなく、著名人が初心者に近い状態で競技を楽しむエンターテインメント企画でした。
プレーレベルや演出に批判が集まった一方で、大きなテレビ番組でピックルボールが扱われたこと自体、競技の認知度が大きく高まっていた証拠とも言えます。
上級者同士の激しいラリーだけではなく、初心者がミスをしながら笑って楽しめるのもピックルボールの魅力です。
「上手くなくても、まずやってみると楽しい」。
そんな競技の親しみやすさを多くの人に見せたことが、「PICKLED」の一番大きな意味だったのではないでしょうか。


