プロ選手から直接指導を受けながら、参加者同士のゲームや観光も楽しめるピックルボール旅行が注目されています。
デケル・バーとベン・ジョンズが始めたサービスの内容や、幅広いレベルの参加者を支える運営の工夫を詳しく紹介します。
デケル・バーの旅行経験が事業の原点
プロピックルボール選手のデケル・バーは、幼い頃から旅行を身近に感じる環境で育ちました。
イスラエルで暮らしていたバーの母親は、旅行コンサルティングの仕事をしています。
そのため、子どもの頃から家族とさまざまな地域を訪れ、宿泊施設や移動手段、現地での過ごし方に触れる機会が多くありました。
20代前半になると、バーはプロテニス選手として活動を開始します。
大会や練習のために遠征し、競技用具を持って移動する大変さや、体調を整えながら旅を続ける難しさも経験しました。
一般的な旅行とは異なり、スポーツ選手の遠征では次のような環境が必要です。
- 練習できるコートがある
- 宿泊先からコートへ移動しやすい
- 試合や練習に合わせて食事を取れる
- 用具を持って安全に移動できる
- 疲労を回復できる時間を確保できる
- 急なスケジュール変更に対応できる
旅行業界の知識と、選手としての遠征経験。
その両方を持っていたことが、後にピックルボールと旅行を組み合わせる事業を始める土台になりました。
観光地として魅力的なだけでなく、参加者が快適にプレーできる環境を選べることが、バーならではの強みです。
ベン・ジョンズと旅行サービスを設立
バーは2019年、プロ選手のベン・ジョンズと共同で「Pickleball Getaways」を設立しました。
2人のつながりが生まれたきっかけは、ベンの兄であるコリン・ジョンズです。
バーとコリンは2010年代半ば、ともにプロテニス選手として活動していました。
大会や遠征を通じて親しくなり、その後、ベンが挑戦していたピックルボールをバーも知ることになります。
当時のベンは18歳ほどで、現在のような世界的スターになる前でした。
それでもすでに高い競技力を持ち、ピックルボールの戦術やショットについて深く理解していました。
さらに、ベンは自分ができるプレーを見せるだけでなく、初心者にも分かりやすく伝えられる指導力を持っていました。
各地で少人数のクリニックを行い、プレーヤーへ技術を教えていたのです。
クリニックとは、プロ選手やコーチから技術を学ぶ短期レッスンを指します。
バーは、ベンのクリニックを旅行と組み合わせれば、新しい体験を作れるのではないかと考えました。
2人の強みは次のとおりです。
- バー:旅行業界の知識と遠征経験
- ベン:トップレベルの技術と指導力
- 2人共通:プロ選手としての競技経験
- 2人共通:ピックルボール界とのつながり
最初の旅行プログラムには40人が参加し、その後の企画には16人が参加しました。
当時はバーとベンの2人が中心となり、レッスンや参加者への対応を行っています。
参加者から高い評価が集まったことで、2人は「旅行とピックルボールを組み合わせる形には需要がある」と確信し、開催回数や運営体制を拡大していきました。
ピックルボールと旅行を組み合わせた内容
このサービスでは、ピックルボールのレッスン、参加者同士のゲーム、観光や交流をひとつの旅行プログラムにまとめています。
一般的な観光旅行では、名所を巡ることや食事を楽しむことが中心です。
一方、このプログラムでは、毎日の予定にピックルボールを組み込みます。
主な内容は次のとおりです。
- プロ選手やコーチによる技術レッスン
- 参加者同士で行うオープンプレー
- 初心者、中級者、上級者に分かれた練習
- 試合形式での戦術練習
- プレー後のアドバイス
- 参加者同士の交流
- 滞在先に応じた観光や体験
オープンプレーとは、決まった大会形式ではなく、参加者がペアや対戦相手を入れ替えながら自由にゲームを楽しむ時間です。
レッスンで教わったショットを、オープンプレーですぐに試せることがポイントです。
たとえば午前中にディンクを習った場合、午後のゲームで相手をネット付近へ動かす戦術を実践できます。
ディンクとは、相手コートのネット際へ柔らかく落とすショットです。
強く打つのではなく、相手に低い位置でボールを触らせ、浮いたボールを引き出すために使います。
プログラムの時間配分は、場所や参加者の希望に応じて変えられます。
- ピックルボールを中心にする
- 観光と練習を同じくらい楽しむ
- 自由時間を多めに確保する
- グループでの交流を重視する
競技だけではなく、その土地ならではの体験や参加者同士の時間も楽しめることが、通常のレッスンとの大きな違いです。
事前調査と運営スタッフによるサポート
事業を始めた頃は、バーとベンが旅行中のレッスンや参加者への対応を行っていました。
開催回数と参加者が増えた現在は、予約や移動、宿泊、現地スケジュールなどを担当するスタッフも加わっています。
一般的な旅行に加えてスポーツレッスンを行うため、準備する内容も多くなります。
参加者の部屋を予約するだけでなく、コートの確保、練習グループの編成、指導者の配置なども必要です。
現地ではコーディネーターが次の内容を管理します。
- レッスンの開始時間
- コートごとの参加者とコーチ
- オープンプレーの組み合わせ
- 宿泊施設とコート間の移動
- 食事や休憩の時間
- 観光や自由時間の予定
- 天候などによるスケジュール変更
新しい場所でプログラムを行う場合は、バー自身が現地を事前に確認することがあります。
旅行の専門知識を持つ母親も、新しい開催場所を探す作業に協力しています。
現地調査で確認するのは、コートの見た目だけではありません。
- コートの数や表面の状態
- ネットや照明などの設備
- 宿泊施設からコートまでの距離
- 大人数で移動できる交通手段
- レッスン後に休憩できる場所
- 食事を取れる時間と施設
- 初心者から上級者まで安全に練習できるか
- 観光とプレーを無理なく組み合わせられるか
事前に運営側が現地を確認することで、参加者が到着してから「コートが使いにくい」「移動に時間がかかり過ぎる」といった問題を減らしています。
レベル別レッスンとプロによる少人数指導
1回の旅行には、32~80人ほどが参加します。
参加人数が多いからこそ、初心者、中級者、上級者など、実力の近いプレーヤー同士でグループを作りやすくなります。
ピックルボールでは、実力差が大き過ぎるとラリーが続かなかったり、一方的な展開になったりすることがあります。
同じくらいのレベルの人とプレーできれば、ゲームを楽しみながら自分の課題にも取り組めます。
60人を超える企画では、参加者を2グループに分けてレッスンを行います。
6~7人のプロ選手やコーチが指導し、生徒約5人に対して指導者1人ほどの割合を維持します。
少人数指導では、次のような部分を具体的に見てもらえます。
- パドルの握り方
- ボールを待つときの姿勢
- 打球時のパドル面の角度
- ショット後の構え直し
- コート内での立ち位置
- パートナーとの距離
- 相手の動きに合わせたショット選択
技術別の練習では、次のようなショットを扱います。
- ディンク:ネット際へ柔らかく落とすショット
- ドロップ:後方から相手のネット際へ落とすショット
- ドライブ:前方向へ速く打ち込むショット
- リセット:相手の強打を柔らかく返し、ラリーを落ち着かせる技術
- ボレー:ボールをバウンドさせずに打ち返すショット
初心者には基本姿勢やボールの当て方を中心に指導し、経験者にはショットの選択やダブルスの連係まで伝えます。
コーチは競技成績だけで選ばれるわけではありません。
参加者へ分かりやすく説明できることや、安心して質問できる人柄も重視されています。
参加者アンケートでは、プロ選手やコーチによる指導が特に高く評価されています。
「有名選手と一緒にプレーした」という思い出だけでなく、実際に上達を感じられることが満足度につながっています。
リピーターと参加者同士の交流が成長を支える
参加者の中には、以前の企画にも参加したリピーターが多くいます。
最初は1人や家族で参加した人が、次回は友人や普段の練習仲間を誘って参加することもあります。
サービスが成長した理由のひとつが、こうした参加者の口コミです。
実際に体験した人が、レッスンの内容や運営の安心感を周囲に伝えることで、新しい参加者へ広がっていきました。
ピックルボールという共通の趣味があるため、初対面の人同士でも会話を始めやすいのが特徴です。
交流が生まれる主な場面は次のとおりです。
- レベル別レッスンで同じグループになる
- オープンプレーでペアを組む
- コーチからのアドバイスを一緒に確認する
- ほかの参加者の試合を応援する
- 食事や自由時間を一緒に過ごす
- 旅行後も練習方法や大会情報を共有する
参加者が得られるものは、技術だけではありません。
- 自分の課題に合った具体的なアドバイス
- レベルの近い練習相手
- 共通の趣味を持つ友人
- プロ選手と同じコートに立つ経験
- 普段とは異なる環境でプレーする楽しさ
- 次も競技を続けたいと思えるモチベーション
旅行中に知り合った参加者が、新しい練習仲間になったり、次の企画へ一緒に参加したりすることもあります。
バーは、参加者が旅行の終わりに新しい友人やつながりについて話し、次の旅行を計画する姿に大きなやりがいを感じています。
ピックルボールの上達、旅行先での体験、参加者同士の交流。
この3つをひとつのプログラムにまとめたことが、多くのリピーターを生み、事業の成長を支えています。
まとめ
プロ選手が手がけるピックルボール旅行は、技術レッスン、オープンプレー、観光や交流をひとつに組み合わせた体験です。
レベル別のグループ編成と指導者約1人に対して生徒約5人の少人数指導により、初心者から経験者まで自分の課題に合った練習ができます。
事前の現地調査や運営スタッフによる細かなサポートも、参加者の安心と満足度につながっています。
競技の上達だけでなく、新しい仲間や思い出を得られることが、リピーターを増やす大きな魅力です。


